望む睡眠とのギャップが原因―高齢者の不眠
改善は日々の生活の充実から(東京足立病院 内山真院長)
不眠は、週の半分以上、夜眠るのが困難な状態を言う。寝付きが悪い、朝早くに目が覚めて眠れないなど、高齢になるほど不眠を訴える人が増加する。東京足立病院(東京都足立区)の内山真院長は「高齢者の不眠は、望む睡眠と実際の睡眠のギャップが主な原因です」と語る。
高齢になるほど不眠を訴える人は多くなるが、過剰な心配は禁物
▽必要な睡眠は加齢で減少
2018年の経済協力開発機構(OECD)の調査では、日本人の平均睡眠時間は7時間22分と先進国の中で最も短い。しかし、内山院長は「実は一番望ましい睡眠時間なのです」と話す。健康な人の標準的な睡眠時間は、15歳なら約8時間だが、25歳で約7時間、45歳で約6.5時間と徐々に短くなる。65歳を越えると、睡眠時間は6時間程度になる。
「特に仕事を引退すると健康に対する意識が高まり、睡眠不足は体に悪いと考えて少しでも長く寝ようとしがちです。しかし、実際に体が必要とする睡眠時間は加齢とともに短縮するため、望んでいる睡眠時間は取れず、不眠だと感じてしまいます」と説明する。体が要求する睡眠時間を知り、必要以上に眠ろうとしないことが重要だという。
▽睡眠は7時間以内
睡眠には体の深部の体温が関連しており、手足から体内の熱を放散して深部体温を下げることで眠気が促される。寝る30~60分前に40度前後のぬるめのお湯に漬かると入眠が促進されやすい。日中の適度な運動も効果的だ。
「眠くなってから寝床に入るようにし、睡眠時間は7時間以内、朝は目覚まし時計をかけて決まった時間に起床します。もう少し寝ていたいと感じるくらいが体にはちょうどいいです」と内山院長。起きたら太陽の光を浴びると睡眠と覚醒のリズムが保たれる。就寝前の飲酒は、いびきや睡眠時無呼吸症候群を誘発し、頻尿につながるので避けた方がいい。日中の午後に眠くなるのは体の自然な現象で、病気などがない限り長く寝てしまうことはなく、夜間の睡眠にも影響しないという。
不眠に悩むと、眠れなかったらどうしようという不安が付きまとい、睡眠のための生活になりがちだ。内山院長は「大切なのは、眠れないからといって過剰な心配はせず、日々を充実して楽しく過ごすこと。そうすれば睡眠は自然とついてきます。解決が難しい時は、睡眠専門の医師に相談してください」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/04/17 05:00)
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