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7時間眠れなくてもOK
70歳以上の高齢者

 年齢を重ねるにつれて体力は低下し、昼間でも疲労や眠気を感じることが増える。このため昼寝をしたり、夜は早めに床に入ったりする高齢者も少なくないだろう。しかし、なかなか寝付けない。深夜や早朝に目覚めてしまう。こんな睡眠の問題を訴え、睡眠薬を処方されるケースは決して珍しくない。

若い時より高齢者は睡眠時間が短い(イメージ写真)

若い時より高齢者は睡眠時間が短い(イメージ写真)

 人間は加齢とともに、必要な睡眠時間が減少する。70歳以上になると1日7時間以上の睡眠は生理学的に難しくなることは、あまり知られていない。横浜市内で開催された日本抗加齢学会総会で、睡眠の専門医は「若い世代の睡眠不足が慢性化している一方、逆にシニア世代は必要以上に眠ろうとして、睡眠薬に頼る人も少なくない」と警鐘を鳴らした。

 ◇必要以上の睡眠、習慣に

 「若い人や働き盛りの世代は最低でも7時間の睡眠が必要で、調査によると1時間から1時間半不足している。逆に70歳以上では、1日7時間以上の睡眠を習慣にしている人は43%で、50代の16%を大幅に上回っている」

 慶応大学特任教授(精神・神経科)を務め、東京都内や札幌市の睡眠専門のクリニックで長年、不眠症の診療に携わっている遠藤拓郎医師は同総会のセミナーでこう強調した。

 「睡眠前にメラトニンなどのホルモンが分泌されて体温が下がり、入眠の態勢が整う。逆に目が覚める数時間前には、コルチゾールなどのホルモンが分泌されて体温が上がり、一定の体温に達すると目が覚める」

講演する遠藤拓郎医師

講演する遠藤拓郎医師

 遠藤医師は「入眠」と「覚醒」のメカニズムを説明するとともに、「このようなメカニズムが自然な睡眠をもたらす」と話した。その上で「このメカニズムでは、20代までは8時間の睡眠を取ることができる一方、70代では6時間の睡眠しか取れない」と指摘した。

 ◇睡眠薬、過剰処方の恐れ

 それにもかかわらず、70代以上の多くの人が「疲れた」などといった理由で8時間以上床に入っている、との調査もある。必要な睡眠時間以上に眠ろうとすることから、「床に入ってからなかなか眠れない」(入眠障害)、「夜中に目が覚め、それからなかなか寝付けない」(中途覚醒)、「朝早く目が覚めてしまう」(早朝覚醒)などの問題を訴えるシニア世代が増える、と遠藤医師は分析する。「このような高齢者に睡眠導入薬を処方すると、過剰処方の温床になる。問診で生活リズムを確認した上で、床に入る時間を遅めに指導するなどの対応が有効だ」とアドバイスしている。

睡眠の問題を訴える高齢者も多い(イメージ写真)

睡眠の問題を訴える高齢者も多い(イメージ写真)

 ◇若い世代は睡眠不足

 70歳未満の世代は逆に睡眠時間の短さが問題になる。60代までの理想的な睡眠時間は7時間とされている。しかし、日本における多くの調査によると、実際の睡眠時間は男性が6時間、女性が6時間半で、30分から1時間程度不足していた。遠藤医師は「睡眠時間の短さは、ノンレム睡眠と呼ばれる深い睡眠の比率を低下させ、睡眠の質を悪くしてしまう」と懸念する。

 そこで、遠藤医師は「仕事やゲームなどでストレスや刺激にさらされている間は、コルチゾールの分泌が続いてしまう。そのまま床に就いても体温が下がらず、なかなか眠りに入れないし、眠りの質も悪くなる。ベッドに入る前には、入浴やストレッチなど自身がリラックスできる習慣を組み込み、少し長めの睡眠をとるように心掛けてほしい」と呼び掛けている。(喜多壮太郎・鈴木豊)


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