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コロナ禍うつ気分への対処法
~表現する、転換する、つながる~ 自分へのいたわりも忘れずに

 コロナ禍でうつ気分の人が増えています。昨年来の新型コロナ感染拡大で環境が変化し、適応障害を起こしていることが、その大きな要因と言えると思います。過剰適応することになり、それが続いて1年以上になる今、適応の限度に達して、燃え尽き状態という人も見られます。

 耳鳴り、立ちくらみ、食欲低下、または過食、頭痛―などの身体症状の他、気分がいつもより怒りっぽい、先の希望が持てずうつ気分、イライラが続く―などの気分の変化や、おっくうでだるい、行動がのろい、忘れ物が多い、ミスが増える、お酒の量が増える―などの行動の変化が気になる場合は、適応障害による自律神経のバランス障害などを起こしている可能性があります。

ワクチン接種の対象は全日空の客室乗務員にも広がった(6月14日、東京・羽田空港で)

 ワクチンの接種も進み、少し希望が持てるような状況に変化しつつある今、こうした症状が気になる人は、以下の対策をとっていただきたいと思います。

 ここで思い出してほしいのは、ストレスに対処する3つの基本原則です。

 ストレスに対処するには、ストレッサーによる打撃を受けてへこんでも、それを回復する回復力、考え方の転換(リフレーム)、つながり―という3つの要素が大事です。

 ◇対処策1:表現する

 回復力のカギは、気持ちを表現する場所と方法です。

 もやもやした気持ちを我慢してため込んでいるうちに、気持ちが落ち込んでいきます。感情抑圧が続き、失感情症という状態に陥り、そこからうつになることがあります。あるいは、抑圧が続いて限界に達すると感情爆発し、暴力になったり、ささいなことでけんかになったりします。

 自分の気持ちを表現する場が必要ですが、もやもやをぶつける相手も迷惑なことが多いので、気持ちをノートなどに書くことが役に立ちます。言葉以外の表現方法として、楽器を演奏するなどがあります。

 この他に、身体を通しての感情表現としてジョギング、犬との散歩、子どもの場合は遊ぶ、走る、キャッチボール、踊る―なども大事な表現方法です。子どもは、ボキャブラリーが少なく、言葉で気持ちを表現することが難しいので、体を通しての感情表現が、この時期大事です。子どもとのコミュニケーションをとるのに普段以上の体を通してのコミュニケーション、例えば手をつなぐ、安心できるように抱きしめることで、子どもが落ち着いてきたとおっしゃっていた人もいました。

 ◇対処策2:リフレーム

 リフレームとは、思考回路を変える、ものの見方を変えるということです。

 一つのことがうまくいかない時に他の方法がないかと考えたり、視点を変えたりして、物事を捉えるということです。コロナで、できないことがあると、それと同じではないが他にできないかという代替えの方法を探したりします。

米国でも在宅でのオンライン飲み会が広がった(2020年4月8日、米・バージニア州)【AFP=時事】

 これまでの外での飲み会を家でのオンライン飲み会にしたり、ジムのダンスレッスンが中止になったので、代わりにユーチューブの画面を共有してオンラインダンス会にしたりという方法です。

 また、このようなリフレームの方法を職場や友達や家族で募集して、話し合うこともよかったという人もいました。

 ◇対処策3:つながり

 コロナ禍で最も打撃を受けたのは、このつながりの部分です。震災などの時にも、人は力を合わせることでストレスを乗り切ってきました。コロナ禍では、人との距離を置くことが必要で、対面が制限されたこの1年以上は、非常に厳しい時期でした。

 仕事面では、職場に出勤していれば、何となく分かる、伝わるという雰囲気が分からないから、孤独感が増して仕事へのモチベーションが低下したという人もいました。特に、新入社員や入社間もない人から多く聞く悩みです。こうした状況を避けるために、会議の始まる前に雑談タイムを10分くらいつくるという企業もあり、これがかなり有効という意見もありました。会議の他に、雑談ができる時間帯をつくっておくのもいいかもしれません。

 大学のオンライン授業などでも、こうした雑談タイムをつくる取り組みをしてもいいかなと思います。オンラインの勉強会や趣味を始めたことで、少数の相手との深いつながりだけでなく、浅い関わりの人たちとつながりをつくる機会になったという人もいました。

コロナ禍でも、若いカップルが咲き誇る花々を楽しんだ(2020年4月、三重県桑名市のなばなの里で)

 ◇セルフ・コンパッションを忘れずに

 最後にもう一つ大事なことは、セルフ・コンパッションです。セルフ・コンパッションは、時事メディカルのヘルスコミュニケーションでもご紹介しましたが、「自分をいたわる」という姿勢です。

 コロナで何もできず自分はだめ、と自分を責めることが多い人には、ぜひこんな時期を過剰適応して頑張っている自分をいたわる姿勢を持っていただきたいと思います。

 公園など自然の多い場所で深呼吸する、木々の緑の多い場所に行く、美味しいと思うものを食べる、いい香りを楽しむ―など五感を使い、気持ちをリラックスできる時間をつくっていただきたいと思います。

(文 海原純子)


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