治療・予防

高血圧症患者は夏に注意
~降圧剤が低血圧招く恐れ~

 今年の夏は全国的に猛暑が予想される。新型コロナウイルスの感染拡大に対する警戒が続く一方で、熱中症など、暑さによる健康への悪影響も軽視できない。特に患者数の多い高血圧症患者は、これまで通りの薬の服用を続けると低血圧を起こす恐れがある。

血圧は毎日決まった時間に測定を

血圧は毎日決まった時間に測定を

 ◇脱水症状で過剰な薬の効き目

 「血圧を下げるための内服薬(降圧剤)には幾つかの種類があり、一部の薬は体内が脱水状態に陥ると作用が強く出る。1年を通して同じ薬を同量服用している場合、夏は暑さで発汗が多くなるため、効き過ぎて逆に低血圧になってしまう危険がある」

 東京慈恵会医科大学(東京都港区)の横尾隆教授(腎臓・高血圧内科)は、こう指摘した上で「降圧剤を処方されている人は、梅雨明けまでに一度医師に相談し、必要であれば薬の量を調整してもらってほしい」と話す。低血圧めまいやふらつきなどを引き起こすとともに、脳梗塞の発症リスクを高めてしまうからだ。

 「高血圧症の治療では、通常血圧が高いと患者に注意する。下がると『良かった』と考えるのが普通だ。ただ、夏場は自覚がないまま脱水傾向になる人が多い。高血圧症の比率の高まる高齢になるほど、体温調整の機能が低下する。喉の渇きなども感じにくくなってしまうために、軽度の熱中症になっても気が付きにくくなる」

 ◇区別しにくい症状

 低血圧の自覚症状はめまいやふらつきなど、高血圧と似ており、高血圧症の患者にとって原因を区別しにくい。「早朝など、健康な人でも脱水傾向に傾く時間帯に症状が出れば、転倒から脳梗塞まで多様なリスクを増大させてしまう。実際、夏場の脳梗塞は早朝が多いことを知ってもらいたい」と横尾教授は話す。

 では、どうすればいいのか。家庭で毎日2回、起床時と就寝前など決まった時間に血圧と体重を測定してノートなどに記録することだ。

 定期的に診察を受けていても、医師の前での測定と家庭での測定では、血圧に大きな差が生じていることがある。このため、自宅で日常生活をしている際に、数値に大きな変化があるかどうかを確かめなければならない。一定期間計り続けることで、日ごとの血圧推移の傾向が見えてくるからだ。

体重は朝と就寝前の違いに注意

体重は朝と就寝前の違いに注意

 ◇体重変化に気を付ける

 一方で、体重の変化は脱水状態の把握に有効な指標になる。朝、夜に比べて1キロ以上減少していれば、夜間に脱水状態に陥っていた可能性が高くなる。特に、尿濃縮機能が低下した高齢者は注意が必要だ。脱水状態であれば、就寝前や就寝中にトイレに行く際、少しでも水分補給を心掛けたい。

 実際に長期的に体重が減っていないのに血圧が低下していることが分かれば、医師にこれらの数値を告げた上で相談しよう。「その際に日常の運動量や食生活などについて話すことも忘れないようにしたい」と横尾教授は言う。

 肥満症動脈硬化の進行度、合併症の有無などによっては薬を変えずに経過を見守るという選択肢もある。横尾教授は「実際に服薬量を減らしたり、別の薬に変えたりするにしても、反応を見ながら調整していく必要がある。できれば2週間程度の間隔で受診してほしい」と話す。(了)

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