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腎臓のネフロン数とポドサイト数が正相関することを世界で初めて解明~ポドサイト数を正確かつ簡便に測定する手法を確立~ 東京慈恵会医科大学 Monash University 日本医科大学

 東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科 春原浩太郎助教、坪井伸夫准教授らの研究グループは、Monash大学John F. Bertram教授、日本医科大学解析人体病理学清水章教授らとの共同研究により、日本人の剖検*1で得た腎臓における糸球体上皮細胞ポドサイトの数や大きさを計測し、ネフロンの数とポドサイトの数が正相関することを世界で初めて報告しました。ネフロン数が多い腎臓ではポドサイトの数も多く、ネフロン数とポドサイト数が相乗的に腎機能の維持や腎疾患の進展に関与している可能性が示唆されました。

 ネフロンは、糸球体血管係蹄と尿細管からなる腎臓でのろ過機能を担う1ユニットであり、ポドサイトは、糸球体血管係蹄を束ねる上皮細胞です。ポドサイト数の減少は、蛋白尿の原因であり、糸球体硬化すなわちネフロン(糸球体)数の減少に寄与すると考えられてきました。しかし、ポドサイトは、複雑な構造をしているために、ポドサイト数を正確かつ簡便に測定する方法は確立されておらず、ネフロン数とポドサイト数の関連も明らかになっていませんでした。

 われわれはこれまでに、ネフロン数とポドサイト数研究の第一人者であるMonash大学John F. Bertram教授との共同研究により、腎組織一切片からポドサイトの数や大きさを計測する独自の方法を確立しました。今回の研究では、この方法により腎疾患のない剖検で得られた腎臓においてポドサイトの数や大きさを計測し、ネフロン数とポドサイト数が正の相関をすることを世界で初めて確認しました。ネフロン数が多い腎臓ではポドサイトの数も多く、ネフロン数とポドサイト数が相乗的に腎機能の維持や腎疾患の進展に関与している可能性が示唆されました。また、加齢は表層のポドサイト数減少に、高血圧は傍髄皮質層のポドサイト数減少に特に強く関連したことも確認されました。

 今後、本研究結果を基盤として、ポドサイト指標やネフロン数を軸とした臨床研究により、腎疾患の発症・進展メカニズムの解明や腎予後予測能の向上などさまざまな知見が得られることが期待されます。また、本研究でも用いられたポドサイトの数や大きさの計測方法は、腎疾患患者さんより得られた腎生検検体にも適用可能であり、腎疾患の発症・進展や腎予後にポドサイトの数や大きさがどのように関与するのかについて検証する予定です

 本研究成果は、国際腎臓学会誌「Kidney International」に掲載されます(2022年9月27日)。

メンバー:
・東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 助教 春原浩太郎 
・東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 准教授 坪井伸夫
・東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 教授 横尾隆
・Monash University, Department of Anatomy and Developmental Biology Professor John F. Bertram
・日本医科大学 解析人体病理学 教授 清水章

研究の詳細

研究内容

 ネフロンは、腎臓の濾過機能を担う1ユニットです。ネフロン数は、腎臓当たり約60万から120万個と個体差があるうえに、加齢・高血圧腎疾患などにより減少し、慢性腎臓病*2の進展に深く関与しています。ポドサイトは、糸球体毛細血管を外側から束ねる上皮細胞で、腎臓の正常な濾過機能を維持するために不可欠とされます。一方、ポドサイトの脱落と減少は、持続性蛋白尿と糸球体硬化の原因となり、腎臓全体の不可逆な荒廃化への過程として進行性腎疾患に共通した事象と考えられています。しかし、糸球体毛細血管を覆うポドサイトは、複雑に入り組んだ構造をしているために、ポドサイトの数を正確かつ簡便に測定する方法は確立されていませんでした。

 われわれは、ネフロン数とポドサイト数研究の第一人者であるMonash大学John F. Bertram教授との共同研究により、腎組織一切片からポドサイトの数や大きさを計測する独自の方法を新たに確立し、腎移植ドナーでのポドサイトの数と大きさを報告しました(図1)(Haruhara et al. J Am Soc Nephrol 2021)1。今回の研究では、この方法を剖検で得られた腎臓に適用し、腎皮質を三つの領域(表層/中間層/傍髄皮質層)に分けて、ポドサイトの数と大きさを計測しました。腎移植ドナーの研究も含め、日本人の腎臓を対象としたこれらの研究は、日本初の知見です。ネフロン数はphysical disector/fractionator combination法と呼ばれる最も精密な方法で計測しています(Kanzaki et al. JCI Insight 2017)2

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