治療・予防

40代から始まる男性更年期
~「認めたくない」「我慢」でストレス増~

堀江重郎教授

堀江重郎教授

 ◇メンズヘルス外来の役割

 堀江教授は日本初の「メンズヘルス外来」を立ち上げた。この外来では健康寿命を保つために食事運動、睡眠など生活全般の状況とテストステロンの量を定期的にチェックする。「仕事をやめた後もテストステロンが減少する傾向が見られる。人生100年時代と言われる中で、健康寿命の延伸にメンズヘルス外来が果たす役割が重要になってきた」と堀江教授。「この先どのように過ごしたいか」を丁寧にカウンセリングした上で、その人のライフスタイルや好みに即した生活指導を行うことに力を入れ、継続的な効果を上げているという。

 ◇キーワードは自己家畜化

 野生動物が人間との共生に適応できるよう形質や性質を変える「自己家畜化」という現象がある。「この現象はテストステロンの減少を考える上でのキーワードになる」と堀江教授。野生のネズミが生息する野原に幾つかの穴を開け、穴の中に餌を置いた実験がある。穴には常に餌があると気付いたネズミはやがて、穴に住み続けるようになった。1年後、穴に住み着けたネズミは、そうではないネズミに比べて脳の容量が小さくなっていることが分かった。

 堀江教授は「同様の事が日本の社会でも起きているような気がする」と話す。それは、ビジネスパーソンの自己家畜化だ。

 「過度の家畜化は危険だ。何かの弾みで環境が変化した途端、生き延びることができなくなってしまうから。滅私奉公のように一つの組織に尽くす働き方は思考停止に陥るだけでなく、失敗を恐れて大胆な思考や行動を起こせなくなってしまう」

 前立腺肥大症も治療を

 男性の更年期に性欲の減退や勃起力の低下など性機能に関わる症状が表れる場合がある。勃起不全(ED)前立腺肥大症(BHP)は深い関係がある。頻尿や排尿困難、残尿感などの症状があると、精神的にストレスがかかり、それだけでも男性ホルモンが低下することが研究から分かっている。堀江教授は「前立腺肥大症も合わせて治療することにより、男性ホルモンの数値が上昇することが確認されている」と言う。(鈴木豊)

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