重大な病気のサインかも
~勃起障害「ED」(順天堂大学医学部付属浦安病院 辻村晃教授)~
性交を行うのに十分なほど勃起しない、もしくは勃起した状態を維持できない勃起障害(ED)。加齢などさまざまな要因で勃起力は低下するが、順天堂大学医学部付属浦安病院泌尿器科の辻村晃教授は「EDの背景に、命に関わる病気が潜んでいる可能性もあります」と警鐘を鳴らす。
心筋梗塞や脳梗塞と同じメカニズムで起こるED
◇動脈硬化が原因か
勃起は、性的興奮により神経伝達物質(一酸化窒素)が分泌され、陰茎の海綿体に血液が充満して起きる。年齢の他に糖尿病、肥満、高血圧、喫煙、男性ホルモン低下、睡眠時無呼吸症候群、抑うつ症状といった、身体的な病気や精神的なストレスなどさまざまな要因で勃起力は低下する。
辻村教授は、特に老化、糖尿病、喫煙の三つに注目。「共通するのは動脈硬化で、陰茎動脈の血流が悪くなってEDを引き起こしていると考えられます」と指摘する。
陰茎の海綿体に血液を送る陰茎動脈の直径は約1~2ミリで、心臓の冠動脈(約3~4ミリ)や頭部の内頚(ないけい)動脈(約5~7ミリ)と比べて狭い。「EDは心筋梗塞や脳梗塞と同じメカニズムで起こり、血管が細い陰茎動脈はより動脈硬化の影響を受けやすい。EDは、心筋梗塞や脳梗塞の前触れかもしれません」
心筋梗塞などの患者では、EDになってから発症までの期間は平均39カ月という海外の研究報告がある一方、日本では既婚者のED検査の受診率は4.8%という調査結果もある。受診率が低いのは、男性としてのプライドや医療機関に行くのが恥ずかしいといった理由が考えられるという。
◇内服薬で改善
EDの治療は、血管を拡張させて勃起時に陰茎に流入する血流量を増やすPDE5阻害剤の内服が主体となる。辻村教授によると、PDE5阻害剤で一時的にEDの症状は改善するが、原因を突き止めた上で根本的な治療を受ける必要があるという。
EDは全身に起こっている病気の症状が陰茎に表れている可能性があることを踏まえ、辻村教授は勃起力の低下を感じたり、性交に不安があったりする場合には早めに泌尿器科を受診することを勧める。「受診時には、他に病気があるのではないか心配なので検査してほしいなどと相談することが大切です」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2023/03/08 05:00)
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