前立腺肥大症〔ぜんりつせんひだいしょう〕 家庭の医学

 膀胱(ぼうこう)の出口のすぐ下には前立腺があります。これが大きくなると前立腺肥大症となります。肥大した前立腺が尿の通りをわるくするために排尿が困難となる一方、膀胱の機能にも障害が生じて、過活動膀胱(かかつどうぼうこう)の症状もあらわれます。

 前立腺のがんではないので、いくら大きくても、生活に支障がなければあえて治療する必要はありません。ただし、出きらずに残った尿が多くなると、尿閉(にょうへい:膀胱にたまった尿が出せなくなること)や、腎臓にまで影響して水腎症になることもあります。

[症状][診断]
 症状としては、尿の勢いがわるい、残尿感がある、尿がしたくなると間に合わないなどがあらわれます。ただし、症状だけでは診断はできません。尿検査に異常があれば、ほかの病気を考えます。超音波(エコー)検査で前立腺の大きさや腎臓の状態を確認することも必要です。尿の勢いを測定する尿流測定をおこなうこともあります。血液検査で前立腺特異抗原(PSA)を測定し、異常高値であれば前立腺がんを疑います。

[治療]
 軽度の前立腺肥大症の場合には薬物療法が用いられます。α遮断薬には前立腺の緊張をとる作用があります。ホスホジエステラーゼ・タイプ5阻害薬も同様に、前立腺や膀胱の出口の緊張をゆるめます。男性ホルモンの作用を抑制する薬もあり、それは前立腺を小さくします。
 薬剤の効果が不十分であったり、通院がめんどうになったりした場合は、手術で治療します。肥大した前立腺を切り取るには、内視鏡を入れて前立腺を内側から切除する経尿道的前立腺切除術(TUR-P)が主流でしたが、最近ではレーザー治療がひろまっています。出血量が少ない、血液凝固阻害薬(血を固まりにくくする薬)をのんでいても手術ができる、入院期間が短い、などの利点があり、より安全な手術が可能です。

(執筆・監修:東京大学大学院医学系研究科 教授〔泌尿器外科学〕 久米 春喜)
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