機能性疾患も早期発見
~「立位CT」に幅広い有用性(慶応義塾大学 陣崎雅弘教授)~
慶応義塾大学医学部(東京都新宿区)とキヤノンメディカルシステムズ(栃木県大田原市)は、立位・座位で検査を受けられるコンピューター断層撮影装置(立位CT)を共同開発し、機能性疾患の早期診断などで幅広い有用性があることを明らかにしてきた。開発を主導した放射線科学教室の陣崎雅弘教授に話を聞いた。
立位CT
◇入退室時間を約半分に短縮
立位CTは2017年に世界初となる臨床第1号機が同大学病院(東京都新宿区)に導入され、今年5月に藤田医科大学病院(愛知県豊明市)、11月には慶応大学病院予防医療センター(東京都港区)にも設置された。
従来のCTは、患者があおむけに寝た状態でベッドが装置の中に水平方向に入り撮影される。一方、立位CTは装置が垂直方向に移動して撮影する。患者は靴を履いたまま装置中央に立ち、棒状の補助具が背中を支える。椅子に座って撮影することもできる。
「靴を脱いでベッドに横になる必要がなく、入退室に要する時間も通常の約半分になり、総検査時間が短くなります。患者さんは楽に感じるようで、次回の検査も大部分の人が立位CTを希望されます」
◇身体機能の衰えなどに
診断については多くの利点がある。腰から足にかけて痛みが出る「腰椎すべり症」など、立位で症状や異常所見が現れる病気の原因の特定に役立つ。「腹圧により腸の一部が脱出する『そけいヘルニア』や骨盤底から臓器が一部脱出する『骨盤脱』など、頻度は比較的高いものの従来は客観的診断が難しかった病態を診断することもできます。立位で体重がかかる膝関節の異常を早期に検出することも可能です」
個々の姿勢の特徴を明らかにすることも可能だ。「体幹や大腿(だいたい)の筋肉量や骨盤底筋の緩みの経年観察を行い、体幹、足、骨盤底、どの筋肉が衰えているかを明確にすることで、個々に応じた運動療法を指示できます。腹囲は従来のようにメジャーを使う必要はなく、立位CTで正確に測ることができます」
超高齢社会では、健康を保ち長生きするために機能性疾患の早期発見や予防の必要性が高くなっている。陣崎教授は「立位CTは、このようなニーズにマッチしており、健康長寿を維持するための多くの場面で有益です」と評価している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/03/27 05:00)
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