治療・予防

スマホで過敏性腸症候群改善
~自己管理プログラム開発(早稲田大学 田山淳教授)~

 腹痛、下痢便秘などの症状が長期間続く過敏性腸症候群(IBS)。その発症、悪化にはストレス、食事運動などが関係するため、適切な自己管理が重要とされる。患者がスマートフォンなどで自己管理するためのプログラムを開発した、早稲田大学人間科学学術院(埼玉県所沢市)の田山淳教授に話を聞いた。

eHealth視聴群、非視聴群におけるIBS症状の重症度

eHealth視聴群、非視聴群におけるIBS症状の重症度

 ◇症状のマネジメントが大事

 IBSは、腸の画像検査などで異常がないにもかかわらず、腹痛、下痢などが数カ月以上繰り返し出るのが特徴で、生活の質(QOL)が著しく低下する。

 田山教授らが2016~18年に行った調査では、患者の割合は日本人で約15%と推定された。「一般的には若い人、特に女性に多いと考えられていますが、中年や男性にも少なくないです」

 発症と悪化には、ストレス、食事内容、運動習慣や感染性腸炎などが影響することが分かっている。「最近は、腸内細菌のバランスの乱れによる影響が注目されています。早めに診断、治療を受けることが大事ですが、簡単に治らないことが多いようです。病気と長期間上手に付き合うために、患者さん自らがマネジメントしていく姿勢が重要です」

 ◇QOLや腸内細菌も改善

 田山教授らは、患者が症状が出る仕組みや治療法、望ましい食事運動、ストレスへの対応などを理解し、行動を変える手助けをするための自己管理プログラム「eHealthシステム」を開発した。有効性が証明されている欧州の自己管理用ガイドを和訳した上で日本で運用できる形に改変し、スマホやパソコン、タブレットで視聴できるようにした。

 IBSと診断されている女子大学生40人を対象に、eHealthシステムの有効性を検討。40人を二つに分け、一方のグループに8週間視聴してもらった。その結果、試験開始前と視聴しなかったグループに比べ、重症度とQOLレベルが明らかに改善した。IBS症状との関係が指摘されている腸内細菌「シアノバクテリア」も減少した。

 「eHealthのシステムは開発段階にあり、今後実用に向けて研究を進めたい。セルフマネジメントが重要な糖尿病など、他の慢性疾患への応用も考えています」と田山教授は話す。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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