過敏性腸症候群(IBS)〔かびんせいちょうしょうこうぐん〕 家庭の医学

 腸管内に器質的病変(炎症や腫瘍など肉眼的に確認できる病変)がないにもかかわらず、腸管運動異常、腸管知覚過敏(ちかくかびん)を起こす機能的疾患で、心理的な異常を伴うことも多いとされています。

[原因]
 ストレス、免疫異常、自律神経異常などが病因として考えられていますが、はっきりとした原因は解明されていません。

[症状]
 腹痛、腹満、便通異常などのほか、多くの場合で、頭痛、疲労感、倦怠感(けんたいかん)、うつ症状、不安感など、腹部以外の症状もみとめられます。診断基準が決まっており、便の性状や頻度、腹痛や腹部不快感の程度、持続期間などによって診断をつけます。便通異常により、便秘型、下痢型、便秘・下痢交替型に分けられます。

[治療]
 便の異常や腹痛が長く続く場合には内科を受診します。この病気は機能的疾患のため、痛みの原因となる器質的病変がないことを大腸内視鏡検査などで確認しなければなりません。
 原因が解明されていないため、すべての症状を完全には取り除くことができない可能性があります。そのうえで、日常生活になるべく支障をきたさないように病状をコントロールすることになります。
 生活のなかで、疲労、倦怠感、不眠、不安、精神的ストレスなどの身体的、心理的な原因があればできるだけ取り除くようにします。また、起床、就寝の時間を決め、三食をきちんととるなど、規則正しい生活をすることも大切です。
 整腸薬、下痢止め、便秘薬など症状に応じて内服し、症状が軽くなればその内服を継続します。市販の薬でも、内科で投薬を受けてもかまいません。
 これらの内服で症状が消失しない場合には、精神的・心理的要因を取り除くため、心療内科を受診して心理カウンセリングを受け、病態に応じた抗不安薬などの投薬を受けると症状が改善する可能性があります。

(執筆・監修:医療法人社団哺育会 桜ヶ丘中央病院 外科部長 榎本 雅之)
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