診断に時間かかる難病・希少疾患
~遺伝子解析で進展も(大阪大学大学院 加藤和人教授ら)~
診断や治療法が確立していない難病・希少疾患は多い。大阪大学大学院医学系研究科(大阪府吹田市)「医の倫理と公共政策学」の加藤和人教授、大学院生の磯野萌子さんは、こうした疾患の患者にインタビューを行い、正式に診断されるまでに直面した困難などを調べた。
難病・希少疾患は診断されるまでに困難も
▽診断までの終わりなき旅
難病・希少疾患の患者の多くは、「診断を求める終わりなき旅」を続けると言われている。磯野さんらが調査したのは、遺伝子変異により全身に腫れやむくみの発作を繰り返す「遺伝性血管性浮腫(HAE)」の患者9人。HAEは、体の表面が腫れたり、腹痛や下痢になったりする。気道閉塞(へいそく)を発症して命に危険が及ぶこともある。
しかし、9人がHAEと診断されるまでに要した時間は、平均約20年に及んだ。
「体の表面が腫れる症状が起きる患者さんは、原因が知りたくて何度も医療機関を受診したが診断がつかず、医師に『様子を見ましょう』と言われたり、体質のせいと諦めたりした経験を持っていました」と磯野さん。
腹痛や下痢の場合、「おなかの風邪」「過敏性腸症候群」と言われたり、精神的な要因が疑われたりした人もいた。大学病院や総合病院に紹介されることもなく、発作のたびに同じ医療機関を繰り返し受診した挙げ句、受診しなくなった例もあった。
▽希少疾患の可能性を疑う
ただし現在、HAEは遺伝子解析で診断できるようになり、有効な治療薬も開発されている。他の難病・希少疾患でも診断や治療が可能となったものも多い。
例えば、腹痛のために受診した場合も、医師に体の表面が腫れることがあることを伝え、発症時の写真も見せると、医師がHAEの可能性に気付く可能性がある。そして遺伝子解析で診断されれば、治療に進むことができる。
「早期診断のための体制整備を進めるとともに、患者さんと医療者が難病、希少疾患の可能性に気付きやすくする施策も必要です」と加藤教授。
日本医療研究開発機構(東京都千代田区)は、希少疾患の可能性がある人について、かかりつけ医師と専門病院が連携し遺伝子解析の診断につなげるプログラム「未診断疾患イニシアチブ(IRUD)」を推進している。IRUDのサイトには遺伝子解析の対象となる病気などについて説明されているので、ダウンロードして医師に相談するとよい。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2022/10/22 05:00)
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