治療・予防

発作性夜間ヘモグロビン尿症
~貧血、褐色尿、血栓が主徴(東京医科大学病院 後藤明彦主任教授)~

 発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は血管内で赤血球が壊れて褐色の尿や貧血を伴う国の指定難病だ。血栓ができて命に関わる場合もあるが、近年はさまざまな治療薬が開発され、患者の生活の質は改善しているという。東京医科大学病院(東京都新宿区)血液内科の後藤明彦主任教授に病気の特徴や治療法などを聞いた。

健康な人はGPIアンカーによって補体制御因子がつなぎ留められている

健康な人はGPIアンカーによって補体制御因子がつなぎ留められている

 ◇溶血性貧血

 PNHは、赤血球などの元になる骨髄の造血幹細胞の遺伝子異常によって起こる後天性疾患で、国内の患者数(特定医療費受給者証所持者)は約1000人とされている。

 血液中には補体というタンパク質があり、細菌やウイルスなどの病原体から体を守っている。補体が赤血球に付くと赤血球に穴が開いて壊れてしまう。そのため、赤血球の細胞膜には補体制御因子というタンパク質が備わっていて、補体の攻撃をかわす仕組みがある。補体制御因子は細胞膜にあるGPIアンカーというタンパク質につなぎ留められているが、PNHではGPIアンカーが細胞膜から剥がれ、補体制御因子がなくなるため補体の攻撃を受けて壊れやすくなる。

 PNHの主な症状は貧血、褐色尿、血栓だ。「補体によって赤血球が壊されて減少する『溶血性貧血』が起きることで、全身倦怠(けんたい)感、脱力感などが生じます」。体への酸素の運搬に関わるヘモグロビンが壊れた赤血球から尿に排出され、その濃度によってコーラ色や赤ワイン色の尿が見られる例もあるという。

 「特に、夜間就寝中は呼吸数が減るなどして血液中の二酸化炭素が増えやすく、それによって補体が活性化しやすくなります。また、血栓は静脈でできやすいですが、場所によっては命に関わるときもあります」

 薬物治療が中心

 PNHの診断は血液検査で特徴的な赤血球の有無を調べる。健診で貧血が見つかったことをきっかけに、この病気が発見されるケースもある。

 根本治療は造血幹細胞移植だが、合併症のリスクが高い。症状が特に重い患者以外は静脈注射薬のエクリズマブ、ラブリズマブ、内服薬のダニコパンの併用などで補体の活性を抑える治療が中心だ。治療中は、感染症に注意する必要がある。

 後藤主任教授は「PNHは進行が緩やかですが重い合併症を来すこともあります。近年は有効な治療薬も増え、今後も皮下注射薬や内服薬など新しい薬が加わる見通しで、ある程度患者さんの状態、生活に合わせて治療方法を選択できるようになりました。原因が思い当たらない疲労感や気になる症状があれば、まずは内科などを受診し貧血の検査を受けましょう」と助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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