治療・予防

早めに熱中症対策を
~昨年以上の猛暑に備える~

 今年の初夏は夏日(最高気温25度以上)や真夏日(同30度以上)が各地で相次ぎ、梅雨明け前から真夏日が続くような猛暑となる可能性もある。夏の甲子園(高校野球全国大会)も、一部の試合を暑さの厳しい真昼を避けて日程を決めるなど、例年以上の猛暑への対応が早々と決まった。「暦の上では初夏でも、今のうちから真夏だと想定した暑さへの備えをしてほしい」と、熱中症など暑さに関する健康問題に詳しい医師は警鐘を鳴らしている。

 ◇間に合わぬ「暑熱順化」

今年初めて夏日となり、傘を手に東京・銀座周辺を歩く人たち(3月31日)

今年初めて夏日となり、傘を手に東京・銀座周辺を歩く人たち(3月31日)

 「昨年と同様、今年も気温の上昇は例年より早くなるのではないか。ここまで暑くなるスピードが速くなると、自然に気候の変化に合わせて体を暑さに慣れさせる『暑熱順化』では間に合わない。猛暑だった昨年以上の暑さ対策が早くから必要になる」。暑さ対策に詳しい済生会横浜市東部病院患者支援センター長の谷口英喜医師(麻酔科)は、早期対応の重要性を強調している。

 谷口医師が強調するのは、昨年のように最高気温35度を超える猛暑日が相次いだ場合の対応だ。こうなれば、「個人の努力で対処できる暑さを超える可能性がある」と言う。

 簡単にできる対策は少なくない。夏服に早めに衣替えしたり、まだ涼しい早朝に短めの散歩をしたり、シャワー浴よりも湯船に入るようなことを心掛けて発汗作用を刺激しておいたりすることだ。さらに、今のうちから昼間の外出には水分はもちろん、男性も含めて日傘や帽子の携帯を忘れないようにしたい。 

 ◇早めにエアコンを確認

 室内の準備も大事だ。まずエアコンのリモコンの作動テストと本体の試験運転は忘れてはいけない。特に高齢者宅では、リモコンの故障や電池切れがないか、暖房の設定のままでないかなどを確認する。本体は清掃して、ガスが必要量充填(じゅうてん)されているかをチェックすることが望ましい。

 「フィルターの掃除は自分でもできる。しかし、昨年酷使したことを考えると、何年か使ったエアコンは、早めに専門の業者に清掃してもらう方が安全だろう」と、谷口医師はアドバイスする。

 合わせて、枕元に温度計や湿度計を置くことも欠かせない。エアコンの設定温度まで部屋を冷やすのには時間がかかるし、建物が吸収した熱が少しずつ放射されて夜になっても室温が下がらないことがあるからだ。

 ◇湿度にも注意

 もう一つの問題は湿度だ。梅雨時などは気温がそれほど高くなくても湿度が高いと、発汗による気化熱で体から熱を放出することが難しくなる。谷口医師は「湿度が少しでも上がるだけで熱中症のリスクは高まってしまう。気温と並んで湿度についても要注意だ」と指摘する。

 気象庁が発表する熱中症の危険度を示す「暑さ指数(WBGT)」では、湿度7割、日光や周囲の建物からの放射熱2割、気温1割の比率で計算されている。この指数については環境省のホームページなどで公表されているので、天気予報と同じようにこまめにチェックするようにしたい。

 ◇一足先に予防策を

 一足先に熱中症の予防策を講じよう。

全国高校野球選手権大会の開会式で、水分を補給する選手(2023年8月6日)

全国高校野球選手権大会の開会式で、水分を補給する選手(2023年8月6日)

 最初に必要なのが、十分な睡眠を取り自律神経を活発化させ、水分と栄養補給のためのしっかりした食事だ。また、日中のスポーツや重作業は暑さの厳しい真昼を避け、定期的な休息と水分補給を決めて実施するといった、以前であれば真夏にする対策を今から始めておきたい。

 その上で、めまいやだるさ、口の中の渇きを覚えたら、すぐに涼しい場所に移り、スポーツドリンクやお茶、ひどい場合は経口補水液などで水分補給を欠かさないことも大切になる。激しい活動をしているときだけでなく、水分摂取が頻繁にできない就寝中も同様で、就寝時や起床時だけでなく、夜中に目が覚めたときも欠かさないでおこう。

 谷口医師は「日本の今の夏は、昔のように打ち水や扇風機だけで対処できる暑さではなくなっている。夏本番になって慌てないように、今から準備をしておいてほしい」と呼び掛けている。(喜多壮太郎)

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