Dr.純子のメディカルサロン

アマゾンの不思議な家族関係
虐待も不倫もないわけは?

正装したヤワラピチ族の長老2人と

正装したヤワラピチ族の長老2人と

 ◇死のリスクもある過酷な通過儀礼

 南 大きな要因は「通過儀礼」があるからだと思います。アマゾン先住民族の大人になるための通過儀礼は厳しいものがあります。女の子は初潮があると、その後1年間は家の隅に小さな空間をつくり、その中で一人で誰とも話さず、外に出ないで過ごします。家族と話すことも禁止です。食事は家族が囲いの近くに置いておきます。一人で孤独に耐え、ものを考える時間を過ごすのです。1年以上、外に出ないので肌は白くなり髪も伸び放題になります。この期間が終わると「儀式を無事に終えた」として祝福されます。

 海原 それは厳しいですね。男の子も通過儀礼がありますか。

 南 男の子の場合は、13歳くらいで過酷な儀礼があります。強い毒性のある薬草を煎じた飲み物を飲むのです。毒により強い幻覚が出て、場合により死んでしまうこともあるのですが、これを生き延びると大人として認められます。過酷ですが、これを通過したことで表情も変わります。こうした過酷な通過儀礼を生き延びたことで全員に平等感があるのです。誰が上、誰が下、ということではなく全員が同じラインに立っている。

 ◇それぞれが自分の居場所

 海原 身体的なハンディキャップがある人もいるのでしょうか。

 南 はい。どこの部族にも障がいがある数人がいます。耳が聞こえない、手足が不自由というようなことです。また、人と話をすることができず自分の世界に引きこもるような人もいます。ただ、そういう人はものつくりが上手だったり、子守が素晴らしくうまかったりして周りから頼られています。狩りの才能がある人もいます。ちゃんとそれぞれが自分の居場所を持ち、感謝され尊厳を持って生きています。

 海原 通過儀礼を乗り越えたという事実でみな平等になるのですね。先進国と言われる国の問題をいかに解決していくかのヒントがあるアマゾン先住民の人たちの暮らしですが、アマゾンも熱帯雨林が次第に伐採され畑に変わっていると聞きます。

 南 一番大事なことは他と比べないことです。そこに優劣もつけない。

 あるがままを尊重しているインディオの社会ですが、現在、猛スピードで開発が進み、森が消失の一途をたどっています。酸素供給源のアマゾンの森が残るように支援活動を頑張ります。(了)

南研子さん

南研子さん

 南研子(みなみ・けんこ)特定非営利活動法人 熱帯森林保護団体(Rainforest Foundation Japan: RFJ)代表。70年女子美術大学卒業。大学卒業後、NHKテレビ「ひょっこりひょうたん島」などの美術制作を担当。89年、英国の歌手スティングが行った「アマゾンを守ろう」というワールドツアーにてカヤポ族長老ラオーニと出会い、同年5月に当団体を設立。92年から19年まで34回にわたり、アマゾンのジャングルで先住民と共に暮らし、多岐にわたり支援活動を行っている。延べ滞在日数は2000日を超える。著書に「アマゾン、インディオからの伝言」(ほんの木)、「アマゾン、森の精霊からの声」(同)、「アマゾンの不思議な森へようこそ」(合同出版)がある。

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