安易な手術に待った
~肛門皮垂(寺田病院 寺田俊明院長)~
いぼ痔(じ、痔核)や切れ痔(裂肛)などの名残として、腫れが引いた後に皮膚の余剰部分がたるんでしわになる「肛門皮垂(ひすい)」。スキンタグとも呼ばれ、若い女性などがその見た目を気にして手術を求めるケースがあるという。寺田病院(東京都足立区)の寺田俊明院長は「安易に治療をするべきではありません」と警鐘を鳴らしている。
症状がなければ治療の必要なし
◇病気ではない
便秘や出産でいきんだり、下痢を繰り返したりすることで肛門の静脈に強い負荷がかかるといぼ痔や切れ痔になりやすい。
「いぼ痔の場合、肛門と直腸の境目にある歯状線(しじょうせん)より直腸側にできるのが内痔核、肛門側にできるのが外痔核。歯状線より直腸側は知覚神経がなく痛みを感じにくい一方、肛門側は痛みを感じやすいのが特徴です」。いぼ痔による肛門皮垂は、外痔核の腫れが引いた後、その部分の皮膚がたるんだ状態を指す。急激なダイエットでおなかや太もも周りの皮膚がたるんだ状態をイメージすると分かりやすい。
「肛門皮垂自体は病気ではありません。人は生まれてからずっと排便を繰り返しますから、症状の有無にかかわらずほとんどの人は痔核を持っており、目立った症状さえなければ特に治療をする必要はないのです」
◇支障があれば受診
寺田院長は、いぼ痔を氷山に例える。「水面下でできる氷が内痔核、水面に出ている部分が外痔核です。外痔核の名残である皮垂だけを手術で切除しても再び外痔核はできてしまいます。本来なら内痔核そのものを切除する根治手術を行うべきでしょう」
しかし、生活に支障を来すほどの症状があれば話は別だ。皮垂が大きく排便後にお尻が拭きづらかったり拭き残しがあったり、皮垂周辺部がかぶれたりするなら、迷わず肛門科を受診したい。だが、根治手術を行っても、排便をする以上、新たに痔ができてやがて皮垂になる可能性は十分にあるという。
「症状がないケースでは、治療は自由診療で行われます。再び痔になれば、手術を繰り返すことにもなりかねません。赤ちゃんの頃のようなしわや皮垂のない肛門には戻れません。皮垂は生きてきた『年輪』のようなもの。安易に治療を行うことはやめましょう」と、寺田院長は注意を呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/07/26 05:00)
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