研究・論文

血液検査でうつ病発見
新薬開発にも期待

 九州大学大学院(福岡市)と大阪大学大学院(大阪府吹田市)、国立精神・神経医療研究センター神経研究所(東京都小平市)などの研究グループが、うつ病の重症度や死にたい気持ち(自殺念慮)に関わる血中代謝物を発見した。うつ病治療に今後どう生かされるのか、研究に参加した国立精神・神経医療研究センター神経研究所疾病研究第三部の功刀浩部長に聞いた。

 ◇新たな診断法に期待

うつ病の全体像が解明される日も近いかもしれない
 研究グループは、うつ病やそううつ病の患者から抽出した100種類以上の血中代謝物を調べ、うつ病の重症度に関係する20種類の代謝物を特定した。功刀部長は「その中でも3―ヒドロキシ酪酸、ベタインなど五つの代謝物がより強く関係していることが示唆されました」と説明する。

 これまで、うつ病の重症度の判定は医師による問診が中心で、トレーニングを積んだ精神科医でなければ正確な判定は難しく、ばらつきも出やすかったという。それだけに、今回の研究成果が客観的な診断法の開発につながるのではと期待が高まっている。

 ただ、血中代謝物は薬や食事の影響を受けやすく、血液検査だけでうつ病かどうかを明確に判定することは難しい。功刀部長も「実用化されてもあくまで補助的な手法にとどまるのではないか」とみる。それでも血液検査での診断が加われば、健康診断で早期発見できたり、専門医に紹介しやすくなったりと、早期に治療を始めるきっかけになりそうだ。

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