サークルズ

地球規模の人的ネットワークをつくる
~アジア医学生連絡協議会 AMSA~

 アジア医学生連絡協議会(AMSA=Asian Medical Students' Association)は、アジアの医学生が中心になって活動している学生団体。世界各地に支部があり、各支部を統括するAMSA Internationalの本部はマレーシアだ。1985年に発足し、現在27カ国の人々が参加する国際的な組織として活動を広げている。設立したのは日本人学生だという。

 AMSAの活動を取り上げるのは2度目。前回は年に2回開く国際会議を中心に紹介した。前回紹介し切れなかった話を中心に、日本支部であるAMSA Japanで代表を務める井原紫逸(しいち)さん、医学研究部門の後藤郁子さんから話を伺った。(聞き手・文 医療ライター・稲垣麻里子)

代表の井原さん


 ◇何もできなかった人道支援

 ―発足の経緯は。 

 井原さん 1979年に始まったカンボジア紛争を受け、日本人の医師1人と医学生2人で人道支援のために現地入りしたのですが、実際に行ってみても何をどうすればいいのか分からない。

 災害支援でもよくあることなのですが、現地で被災者が何を必要としていて、支援者はどこに行くべきかが分からない。誰にコンタクトを取るのかもわからず、結局、何もせずに帰ってきたというのです。

 参加した医学生の一人が、そのときの経験で海外とのつながりを持っておくことの必要性を痛感し、帰国の翌年の1985年にAMSAを設立したそうです。

 当初は、アジアの医学生が国を超えて会議をするだけの活動でしたが、将来につながるネットワークをつくれないかということで、年2回の会議だけではなく、交換留学や共同でイベントを開催するなど、活動の幅を広げてきました。

 最初は参加者の国の数も5、6カ国だったのが、現在では27カ国になりました。アジアといっても、エジプトや英国、ウズベキスタンというように、アジアと関連が深い国の学生も参加しています。

 ―日本人が設立したのに、本部は日本ではない。

 井原さん 加盟人数が多いのがタイ、マレーシア、インドネシアという東南アジアの国々なので、そこに本部をつくろうということになったようです。本部といっても、医学生だけで運営している団体なので、基本的に代表は医学生で、事務所があるわけではなく、学生間のやり取りは主にスカイプで行っています。

 ―日本支部の現状は。

 井原さん 会員は全国で約300人、メーリングリストの会員と、正会員がいます。そのうち運営を行っているのは44人です。

 国際会議や留学など、AMSAのコアな活動の情報を受け取るには、正会員になる必要があります。正会員は加入時に3000円を支払います。ただ、正会員でなくてもイベントには参加できます。

国際会議の会場の様子


 ◇1週間、海外の学生と寝食を共に

 ―主な活動内容を教えてください。

 井原さん 活動の柱は国際会議、医学研究、国内会議、留学の四つがあります。中でも根幹となる大きな活動が年2回の国際会議です。27カ国の中から持ち回りで開催されますが、東南アジアでの開催が多いです。

 1週間の開催期間に世界中から約300人の参加者が集まります。滞在中、海外の学生と寝食を共にするので、理解が深まり、置かれている環境や考えていることをじっくり話すことができます。

 私も1年生の時に参加しました。たどたどしい英語を使ってのコミュニケーションでしたが、貴重な経験と一生の友人をつくることができました。

 ―国際会議ではどんなことを話し合うのですか。

 井原さん テーマは毎回違います。基本は「アジアの公衆衛生をいかに向上させるか」です。直近では、2018年にマレーシアで「感染症」、2019年は1月にタイで「糖尿病と肥満」に関することを話し合いました。テーマに沿って、レクチャーを受けたり、地元の病院を見学したり、調査に行ったり。

 中でも一番盛り上がるのが「Academic Competition」です。事前に自国の論文やポスター発表をまとめ、国の代表として、政策や研究、医療について発表します。3~4カ月前から論文を読んだり、取材に行ったりして準備しないといけないので、結構大変な作業ですが、達成感はあります。

 ―医学研究部門の活動は。

 後藤さん 医学研究のメンバーは現在10人弱。AMSAの国際会議において発表する論文やポスターの作製をメーンの活動としています。「Academic Competition」のテーマは半年前に発表されますので、テーマが決まった時点で先に研究を始めます。国際会議の参加者は会議への参加を表明した時点で合流します。

 研究内容は、会議ごとに示されるテーマに沿ってメンバーで考えて決めています。前回19年1月の会議のテーマは「肥満と糖尿病」だったので、私たち日本チームは収入とBMIの関係から肥満や糖尿病について考えました。


 

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横浜市立大学医学部医学科同窓会 倶進会