医学生のフィールド

地球規模の人的ネットワークをつくる
~アジア医学生連絡協議会 AMSA~

自治医科大学での国内交流

自治医科大学での国内交流

 ◇国内イベントも多い

 ―国内の活動は。

 井原さん 海外だけでなく、国内の医療系学生とも交流しています。国際的な活動は国際局という部署が管理し、国内は内務局が管理しています。例えば、広報的な仕事は事務局が担当します。

 イベントとしては、国内交流会や2泊3日の医療系学生キャンプ「JaMSC」などを開催しています。医学生だけでなく、医療系学生全般、歯学、薬学の学生も参加します。これとは別に追いコン、外部団体との共催イベントも不定期に行います。新歓を除くと、年5、6回はイベントが開催されます。

 AMSAの目的は、人と人がつながり、ヒューマンネットワークをつくるということなので、人とつながってやりたいことを見つけるとか、やりたいことがすでにある人は仲間をつくるとか、そういった場を提供するための団体です。

 さらに医師限定ではなく、医療者というくくりでやっています。医師ありきの団体ではなく、横や縦のつながりをつくることに重きをおいています。

 ―交換留学は。

 井原さん AMSAが提供する留学プログラム「AMSEP」があります。AMSEP参加国と日本の大学で交換留学ができます。病院見学だけではなく、かといって、アカデミックだけでなく、社会的、文化的な面でも関わってもらいたいということで、滞在期間1週間を受け入れ側学生が5人交代で対応します。

 こちらに滞在する間のスケジュールは全部、私たち学生が組みます。宿泊先やホストファミリーも学生が探して依頼します。

 私たちが台湾に行ったときは30人以上の学生がもてなしてくれました。病院見学で病院長と話したり、地方のホスピスを見学したり。観光とは違った、いろいろな人に関われる企画が目白押しで、中身が濃く、とても刺激を受けました。交換留学で知り合った台湾の学生とは、今も交流が続いています。

 ◇海外学生の優秀さと意識の高さに衝撃

 ―AMSAに入ったきっかけは。

 井原さん 最初のきっかけは大学に入学して、先輩から国際会議が6月にフィリピンであると聞き、海外に行ってみたかったので、遊びに行く感覚で参加しました。その時、海外の学生があまりにも優秀で意識が高く、こんなに熱く自分の国のことを語れるということに衝撃を受けました。

 AMSAのコアな部分に触れたことで、もう少しこの仲間と関わりたいという思いが沸き上がり、運営スタッフに志願しました。入学当初の自分は医学部に入って、それだけで満足していたのですが、ポジティブな先輩たちに出会って、いい意味でプライドが打ち砕かれたというか、自分の視野の狭さや小ささに気付かされました。

 後藤さん 私は研究者になりたいと思って医学部に入学しました。しかし、大学の授業では医学がメーンで、研究に特化した知識を学ぶ場が少ないと感じていました。

 そんな折、理研のインターンシップに参加する機会があり、そこで出会った理学・工学系の学生は、実験に統計ソフトを使いこなすスキルがたけていて、自分はすごく遅れているという焦りを感じました。

 何か経験を積める場所がないかと探していたところ、AMSAの医学研究部門の存在を知り、自分の求めていたことに近いのではないかと思って参加しました。

2018年にマレーシアで開催された国際会議での後藤さん(右端)

2018年にマレーシアで開催された国際会議での後藤さん(右端)


 ◇とても居心地のいい場所

 ―2人にとってAMSAとは、どんな存在ですか。

 井原さん 以前から国際医療に興味があって、同じ学年でそういうことを話すと、「すごいね」とは言われるだけでしたが、AMSAでは、みんながそれぞれ強い思いを抱いています。

 国際会議で出会った学生は本当に自分の国が大好きで、心の底から医療の質を向上させたいと考えているし、日本のスタッフの中にも、思いやりが全身からあふれている人がいます。

 卒業後、OBやOGはAMSAからは離れますが、さまざまな活動を継続して行っています。仲間と一緒に自分の夢や理想が語れるし、それを共有して自分も成長できる、とても居心地のいい場所です。将来はWHO(世界保健機関)や国境なき医師団のような、国際的な医療活動に関われたらと思っています。

 後藤さん 前回の国際会議では自分たちが行ったアンケート調査から統計を取ったので、最適な検定方法を導き出すことに最も苦労しました。でも、全部終えた時には、これまで理解できていなかった統計ソフトが使いこなせるようになり、達成感を味わいました。

 また、海外に同じように研究を行っている仲間がいるのは心強かったです。彼らとは同じ時期に同じテーマに向かって研究を進めるので、苦労や喜びを分かり合える部分も多く、ただ単に仲良くなるのとはまた違った特別な関係が築けたと思っています。(記事の内容、肩書などは取材当時のものです)

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