2024/11/29 05:00
なぜ尿検査では中間尿を使うのか
最近、インスタグラムでよく見る「漢方ダイエット」。インフルエンサーがこぞってPRしており、気になっている人もいるかもしれません。
肥満症の人には保険適用で漢方の処方が可能。わざわざ高いお金を支払う必要はありません(写真は本文と直接関係ありません)【AFP時事】
これはオンライン診療を通じて肥満のタイプを診断し、漢方薬を処方するというサービスです。
とあるクリニックのホームページには「たくさん食べたい人、運動はしたくない人、また他のダイエット薬は副作用が怖くて飲めない人にもお薦めです」といったことが記載されていました。
◇副作用なく安心?
ホームページに書かれてある薬の効能から推測するに、「ダイエット漢方」の中身は防風通聖散、防已黄耆湯など、肥満症によく使われている漢方薬です。
これらは一般の保険診療でも使われており、十分な食事・運動療法をベースとして内服した場合は、肥満症治療にある程度の効果はあると思われます。
ラットの研究ではありますが、防風通聖散の内服によって、内臓脂肪量が低下することが明らかになっています。
何となく、漢方は副作用のない、体に優しい薬だというイメージをお持ちの人もいるのではないでしょうか。
しかし、どんな薬にも副作用はあります。特に防風通聖散、防已黄耆湯には、共に甘草という成分が含まれており、長期内服は「偽性アルドステロン症」を引き起こす可能性があります。むくみ、高血圧、低カリウム血症などの症状が出るので、定期的なチェックが必要です。
漢方を含め、お薬を継続して内服するなら、数カ月に1回の対面での身体診察や血液検査が望ましいでしょう。
また、甘草1グラムでの副作用の発生率は1%程度であるのに対し、6グラムになると11%になり、容量依存性に副作用の頻度が増加します。
「漢方ダイエット」のクリニックに問い合わせてみましたが、甘草の量などの含有成分は、企業秘密のためか、教えてもらえませんでした。副作用に留意しているという割には、適切な情報提供がされていないように感じます。
◇保険適用で処方可能
結論を申し上げますと、高額な費用を出してまで、買う価値があるとは言えません。
特に肥満症の人に対しては、保険適用で漢方の処方が可能です。多少の配合の違いはあれど、大きく薬効が違うとは考えにくく、自由診療クリニックに10倍程度の価格を支払うことはナンセンスでしょう。
むしろ、保険診療クリニックに通院し、医師の定期的な診察や血液検査も行いながらの治療の方が、費用は抑えられる一方で価値が高いと考えられます。
また、健康を損なわずに痩せるには、食事・運動療法に勝るものは残念ながらありません。
安易な自由診療クリニックのダイエットに飛び付かず、食事の改善、運動の継続をベースとした「時間をかけて少しずつ頑張るダイエット」をしていただきたいと思います。
渡邉 昂汰(わたなべ・こーた) 内科専攻医および名古屋市立大学公衆衛生教室研究員。「健康な人がより健康に」をモットーにさまざまな活動をしているが、当の本人は雨の日の頭痛に悩まされている。
(2021/10/25 05:00)
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