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新型コロナワクチンで死亡例?
誤った情報をうのみにしないで 専攻医・渡邉昂汰

 「割と近い方の知り合いがコロナワクチンで亡くなりました」

インスタグラムに出ていた文章

 先日、インスタグラムを見ていた時に偶然、このような文を目にしました。右にあるのが、その文章全体です。若者を中心に、このような文章が出回り、ワクチンの安全性に懐疑的な人も増えてきているように感じます。

 確かに、26歳の看護師が、ワクチン接種後に脳出血でお亡くなりになられたことは、事実です。厚生労働省のホームページにも、しっかりと情報が記載されています。

 しかし、結論から申し上げますと、この26歳の看護師さんが亡くなった原因は、ワクチンであるとは言えなさそうです。

 ◇前後即因果の誤謬 

 「ワクチン接種の数日後に亡くなっているのだから原因はワクチンだ」と思ってしまう気持ちも、多少理解はできますが、大きな間違いです。

 これを理解するためには、前後即因果の誤謬というものを理解する必要があります。これは、前後関係がある事柄に対して因果関係がある、と誤って結びつけてしまうことです。

 例えば、黒猫を見た後に交通事故に遭ったとしても、交通事故の原因は黒猫であると真剣に考える人は少ないでしょう。黒猫と交通事故には前後関係がありますが、因果関係があるとは言えないです。

 同様にワクチン接種と死亡には前後関係はありますが、因果関係はあるとは言えません。当然、因果関係がないとも言えません。

ワクチン接種と死亡には前後関係はあるが、因果関係があるとは限らない【時事通信社】


 ◇死因は何なのか

 では、26歳女性の死因は一体、何なのでしょうか。実際に診察しているわけではないので、推定での話にはなりますが、厚生労働省が発表している情報に、このような記載がありました。

 「頭部CT、小脳左半球CP Angleにかけ、直径3.5cmの血腫あり、石灰化(+)で形態より血管腫や髄膜腫などの、血管性腫瘍からの出血が疑われる。脳動脈瘤の可能性もあり」(原文のまま)

 脳出血は、中年から高齢の人の病気のイメージがありますが、脳腫瘍や脳動脈瘤(りゅう)、脳動静脈奇形などがあれば、若年でも起こり得る疾患です。

 治験でも、ワクチン接種によって脳出血が大きく増えたといったデータはないですし、元々、脳にできていた何かしらのデキモノが、ワクチン接種後にたまたま破裂したと考えるのが自然でしょう。

 ◇前後関係だけで判断しないで

 今後、ワクチン接種が一般の人にも普及していく中で、このような事例も同時に増えていくことが予想されます。

 その度にセンセーショナルな報道やSNS発信がなされ、ワクチンへの不安を感じてしまうこともあるでしょう。どうか、前後関係だけで物事を判断せず、公的機関や主治医から、情報を得ていただけたらと思います。

 「本来であればワクチン接種によって防ぎ得た死」が、少しでも減ることを願っています。

(了)

 渡邉 昂汰(わたなべ・こーた) 内科専攻医および名古屋市立大学公衆衛生教室研究員。「健康な人がより健康に」をモットーにさまざまな活動をしているが、当の本人は雨の日の頭痛に悩まされている。

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