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うがい薬の長期使用は危険
甲状腺機能を低下させる恐れ 専攻医・渡邉 昂汰

 イソジンには、新型コロナウイルスの重症化予防効果がある――昨年、大阪府の吉村洋文知事が会見で、このような趣旨の発言をしたことを覚えていますでしょうか。

ポビドンヨードが含まれたうがい薬を紹介する吉村洋文大阪府知事(右)=2020年8月4日、大阪市中央区【時事通信社】

 実際は、うがいをしたことで、口腔内のウイルス量が一時的に減り、陽性率が減っただけで、重症化を予防するかどうかは、証明されませんでした。

 現在に至るまでも、イソジンがコロナウイルス感染症対策として有用であるという科学的根拠は、立証されていません。

 ◇主成分はポビドンヨード

 イソジンが一時、品薄になるほどでしたが、やみくもなうがい薬の使用は、効果がないだけではなく、実は、一部の人に悪影響を及ぼす可能性があることを頭に入れておかなくてはなりません。

 日本で最も有名なうがい薬であるイソジンの主成分は、ポビドンヨードです。

 甲状腺に異常のない人がヨードを大量に摂取しても、あまり問題はありませんが、もともと慢性甲状腺炎にかかっている人が長期的にヨードを摂取すると、甲状腺機能の低下を起こすことがあります。

 ◇慢性甲状腺炎は気付きにくい

 甲状腺は喉仏のすぐ下にあり、身体を元気にするホルモンを出す臓器です。この甲状腺が、自己免疫によって傷つけられることで炎症を起こすのが慢性甲状腺炎です。

 「橋本病」とも呼ばれ、成人女性の10人に1人、成人男性の40人に1人が罹患(りかん)しているとされる、意外と頻度の高い疾患です。

 炎症が進行して、ホルモン分泌が低下すると、肌荒れ、むくみ、全身倦怠感、脱毛などの症状が現れますが、大部分の人はまだ無症状の段階です。そのため、自分が慢性甲状腺炎であることを自覚していない人も多くいらっしゃいます。

 このような人が、知らずにヨードを過剰摂取してしまうと、一気に病状が進行して、甲状腺のホルモン分泌が低下してしまうことが危惧されます。良かれと思って行ったイソジンうがいが長期にわたると、健康を害する可能性があるのです。

 コロナウイルス感染対策として、今後もさまざまな手段が提案されるかと思いますが、メリットだけでなく、デメリットも考えていただけたらと思います。

(了)


 渡邉 昂汰(わたなべ・こーた) 内科専攻医および名古屋市立大学公衆衛生教室研究員。「健康な人がより健康に」をモットーにさまざまな活動をしているが、当の本人は雨の日の頭痛に悩まされている。

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