一流に学ぶ 難手術に挑む「匠の手」―上山博康氏
(第17回)「患者集めに有利」と出演=病気との闘い、手段選ばず
自分の手術を必要とする患者がいれば、出張して行くこともある。国内の大学病院は、ごく一部を除いてほとんどの病院から呼ばれた。
「自分の所では手術できない症例ばかりですが、大学の若い医師たちに手術を見てもらう教育の意味もあります」
出張手術の謝礼は、各病院の基準によって10万~15万円が相場。中には3万円というケースもあるというが、金額にはこだわらない。
「報酬は言われた金額で、一切交渉したことはありません。手術で1本20万円のハサミを7本ダメにして、140万円の持ち出しになったこともあります。でも、僕は金もうけで動いているわけではない。患者の命が助けられ、優秀な脳外科医を育てるために役に立つのなら、こんなにやりがいのある仕事はありませんから」
執刀した患者からの謝礼金も一切、受け取らない。ただ上山氏は「キャバレーのホステスだって指名料がいる。命がかかった手術で指名が無料というのは、内心、納得がいかないというのが本音です」と話す。
日本の診療報酬体系上、手術の腕の良しあしで手術料は変わらない。全国共通一律料金に不満をもつ医師は多い。
「明らかにお金の入った封筒を差し出されると、一瞬『あっ、これで新しいパソコンが買える』と喉から手が出そうになる。でも、もう一方の手で、それをペンペンってはたきます」と上山氏。「僕は卑しい人間だから一度受け取ってしまうと、もらえなかったときに『何で?』と思うようになってしまう。そうなるのが嫌だから、最初から受け取らないことに決めてるんです」(ジャーナリスト・中山あゆみ)
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(2018/01/04 10:00)