一流に学ぶ 心臓カテーテルのトップランナー―三角和雄氏

(第5回)
研修で人種差別経験
実力とタフさで乗り切る

 ◇経験無駄にせず、症例すべて記録

 「米国では皆が聖人君子というわけじゃない。でも、イエス、ノーをはっきり言える毅然(きぜん)とした態度が取れれば問題はない。実力の他にタフな精神力も必要です」。三角氏は周囲の環境に流されず、自分がやるべきことに集中。理不尽な対応に負けないためには、誰の目にも明らかな揺るぎない実力を身につけるしかなかった。

 「突き抜けた存在になってしまえばいいんです。本当に実力をつけて結果を出せば、敵が味方になることだってある。僕を毛嫌いしていた上司が、5点満点で6点の評価をくれたこともありましたよ。人種差別の国でもあるけど、機会均等の国でもあるから」

 米国の臨床研修プログラムは、三角氏が考えていた以上に充実していた。例えば今月は心エコー、来月は心臓カテーテル、次は冠状動脈疾患管理室(CCU)のレジデント教育と診療、などと1カ月ごとに集中して一つひとつの手技を身に付ける。「心エコーでは1カ月で約700件を読影、心臓カテーテルは120~150件を行うのが普通で、日本の数十倍、数百倍の患者を診られました」と振り返る。

 米国で自ら手掛けたカテーテル治療のすべての症例は、ノートに克明に記録。どう対応したのか、1例1例の経験を一つも無駄にしないようコツコツと書きためた13冊のノートは今でも院長室に大切に保管している。(ジャーナリスト・中山あゆみ)

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