一流に学ぶ 心臓カテーテルのトップランナー―三角和雄氏

(第5回)
研修で人種差別経験
実力とタフさで乗り切る

 「米国で実力をつけたい」。三角氏は思いを実現させるため、学位論文の研究テーマを「無症候若年者の冠動脈病変について」に決めると、教授からシカゴのイリノイ大学への研究留学を紹介してもらい、1985年に渡米。学位論文を仕上げた後も帰国せず、米国で臨床研修を開始した。

 研修先は自分で探し、最初は米国でも救急患者が多いニューヨークの市立病院を選んだ。治安の悪い地域にあったが、多くの経験を積めると考えたのだ。さらにカリフォルニア大学で神経内科、ピッツバーグ大学で今後の基礎となる一般内科を学び、米国の専門医試験の中で最難関という内科専門医の資格を取得した。

 91年にカリフォルニア大学アーバイン校で循環器臨床フェローを開始。その後、ロサンゼルスのグッドサマリタン病院で、心血管インターベンション専門のフェロー研修を2年半行った。

 三角氏は「臨床研修プログラムは約1年間で1クール。自分でいい病院を見つけて、どんどん変えていくのが米国では当たり前」と話す。腕を磨き実力をつけて、競争に勝ち良いポジションを次つぎにつかむと、指導医の中には「有色人種は嫌いだ」「外国人に高い評価はつけない」と面と向かって言う人もいた。

 「勉強することが多い上に、不愉快な目に会うのは嫌なものです」と三角氏。「米国ではお客さんはウエルカム。しかし相手が力をつけ、自分の脅威になってくるとたたきに来る」。勤務先を変わろうとしたとき、指導医から不当に推薦状の内容を悪くすると言われたこともあったという。

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