一流に学ぶ 心臓カテーテルのトップランナー―三角和雄氏

(第13回)
患者教育もライフワーク
スピーディーな対応心掛ける

 ◇コスト削減を意識

 心臓と脚の血管の両方が詰まっていた80歳男性のケースでは、300メートルほど歩くと左足が痛くなり、休むと良くなるという症状が出た。無理して500メートルほど歩くと、今度は胸が締めつけられるように痛む。両側の手足の血圧を測るABI検査の結果、閉塞(へいそく)性動脈硬化症と判明。狭心症も併発していた。

 「脚の血管が詰まっていると、心臓の血管も詰まっていることが多い。いずれにしてもほっておくと命にかかわるので、1本のカテーテルで両方いっぺんに治療しました。2回に分けた方が病院としてはもうかりますが、両方同時に治療した方が患者さんは(負担が軽くなって)喜ぶでしょう。日本の国全体としても医療費が節約できます」

 米国は保険会社が強い力を持つため、病院は常に医療コスト削減を意識しなければならない。同国の病院で経験を積んだ三角氏は「日本の医師はお金に無頓着すぎる」と話す。「米国のように露骨なのは、あまり好きじゃなかったけれど、自分の懐が痛まなければ、いくらかかろうが構わないというのはおかしいと思うんですよね」

 目の前の患者を最優先に考えながら、医療経済というマクロな視点も忘れない。これからの医療人に必要な感覚と言えるだろう。(ジャーナリスト・中山あゆみ)

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