一流の流儀 「信念のリーダー」小久保 裕紀WBC2017侍ジャパン代表監督

(第3回)理不尽さを背負いつつ
生まれながらのキャプテン

「侍ジャパンは手本であれ」と話す小久保さん
 時を経て、常にリーダーとして歩んできた小久保さんは、監督経験がないままでWBCの監督を任された。監督としての小久保さんは「各チームの主力選手に集まってもらった侍ジャパン。だから、すべての面で手本となる選手であってほしい」と考えた。それを「小久保らしい」と感じた人は多かったのではないか。技術的に日本のトップを行く選手たちに徹底したことは、「グラウンドに唾を吐かない」「帽子をきちんとかぶる」―。この2点だ。「侍ジャパンの選手たちに球界を引っ張るのだという使命感を植え付けることも監督の仕事」と考えたのだ。

 日本の野球界には、侍ジャパントップチームの下に少年野球や女子野球も入れて七つの日本代表チームがある。それぞれの代表が全員同じユニホームを着て世界一を目指し、結束して野球の発展に寄与していく。それだからこそ、トップチームは他の侍ジャパンの手本にならなければならない。「小中学生の子どもたちが侍のユニホームを着て、グラウンドに唾を吐くわけはありません。それなのに、なぜプロの選手が唾を吐くのか。おかしい。そんなの示しがつかないですよ。そこで、侍ジャパンの選手に徹底させました」。こう話す声は、インタビュー中で一番大きかった。 

 帽子をきちんとかぶることも、当然だ。「ユニホームはいわば、『戦闘服』です。試合に出ている選手だけでなく、控えの選手でも、ベンチに入るときには帽子をかぶり戦う姿勢でないと、一体感がないでしょう」

 選手を認めつつ、使命感を与える。この二つの決め事は、現在の稲葉ジャパンにも引き継がれた。

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一流の流儀 「信念のリーダー」小久保 裕紀WBC2017侍ジャパン代表監督