女性アスリート健康支援委員会 失敗から学んだ女子指導の鍵
心開かせた「再建請負人」
もっと出てほしい女性指導者―柳本晶一さん
◇男子以上にコミュニケーションは大事
東洋紡を率いた時の経験が、全日本でも役立った。柳本さんは、主力の一人でムードメーカーでもあった高橋みゆき選手の思い出話を披露してくれた。
「私たちは日の丸を背負っているわけで、監督と選手の間には親兄弟も入る余地はないですよ。でも練習が終わったらプライベートでも来い、と。いろんな話もしよう、と言ってチームを始めました。それで練習の最後に監督と選手が並ぶでしょう。僕がいろんな話をしてから、選手が『ありがとうございました』と。それで『ご苦労さん』と言ったとたんに、高橋は僕のことを『しょうちゃん』と呼びましたからね。それはなんぼなんでもあかんやろ、と(笑)」
柳本さんによれば、高度成長期はカリスマ的な男性監督の「俺についてこい」的という指導スタイルが適していたが、もうそんな時代ではない。柳本さんは女子のチームは男子チーム以上にコミュニケーションが大事になることを学んだ。
◇女性スタッフの力借り体調把握
とはいえ、相手が女性選手である場合、男性指導者には入りにくいデリケートな領域もある。柳本さんは2004年アテネ五輪で指揮を執った時には、1964年東京五輪の主将だった河西昌枝さんに団長をお願いした。全日本女子でプレー経験のある女性をマネジャーに起用するなど、女性スタッフの力を積極的に取り入れた。
厳しい練習をするだけに、体調管理は欠かせない。月経痛などの女性特有の問題についても例外ではない。「生理の周期が28日ぐらいとすると、20人ぐらい選手がおったら、3~4人はだぶっています。腰とかの痛みがひどい選手もいるし、そのあたりはスタッフから報告をもらって把握はしていました。理由は『風邪』でも何でもいいんです。帰らせて休ませるとか、『ちょっと医者に診てもらえ』ぐらいのことは僕も言いました」
柳本さんは、もっと女性指導者に出てきてほしいという。
「女性はよく気が回るし、器用ですよ。女性の気持ちが分かるから、粘り強くチームの中に入っていける。人を使うマネジメント術などを身につければ、面白い世代ができるんちゃうかな。すごく興味を持っています」(冨田政裕)
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(2019/02/09 07:00)