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眼内レンズの種類と選び方 【第4回】

 ◇「何をよく見たいか」で決める

 レンズの種類を問わず、皆さんが白内障手術をする場合に考えておきたいのは「眼鏡を使わずに何が見えるのが最も便利か」です。次のような要素を考慮に入れましょう。

 ・車の運転頻度はどの程度か。夜間の運転は多いか
 ・テレビは何メートルの距離で見るか
 ・パソコンは1日何時間使用し、理想的な使用距離はどれくらいか
 ・スマホは1日何時間使うか
 ・趣味は何か。その趣味を楽しむための最適な距離はどれくらいか

車をよく運転するかなど、普段の生活を考慮してピントを合わせる距離を決める(イメージ画像)

車をよく運転するかなど、普段の生活を考慮してピントを合わせる距離を決める(イメージ画像)

 車を眼鏡なしで運転したいという方は多いとみられます。先述したように、気持ちよく運転するためには遠方にピントを合わせなければなりませんので、単焦点レンズの場合には1メートルよりも手前がぼやけてしまう可能性があります。ナビの画面やテーブルに並んだ食事がくっきり見えないこともあると考えなければいけません。

 「普段の生活に眼鏡は必要なかったが、趣味の裁縫をするときは老眼鏡を掛けていた。手術後は近くを老眼鏡なしで見えるようにしたい」と希望する方も多いでしょう。このような方が40センチ程度にピントを合わせてしまうと、遠くが手術前よりもぼやけて見えにくくなってしまいますので、絶対にやってはいけません。

 2~3メートルにピントを合わせると、昼間の運転は快適にできるし、日常生活で眼鏡の使用頻度が大幅に減ります。スマホも少し腕を伸ばせば見えることがあります。皆さんの生活実態を踏まえ、手術後の見え方の最適解を探すことが重要です。

 何を得て何を諦めるか。この選択は皆さんとわれわれ白内障手術を実施する医療機関がよく相談しながら決めていくべきです。しかし残念ながら、相談の機会をほとんど設けていない医療機関が多数あり、現在の白内障手術の最も大きな問題の一つであると認識しています。

 手術を受ける方が100万人いれば、100万通りの生活があります。友達や親戚はもちろん、夫婦でさえ理想的な日々の過ごし方は違います。自分の今までの生活と手術後になりたい見え方を医師に十分に相談し、快適な新しい人生を手に入れてほしいと願ってやみません。(了)

渡邊敬三院長

渡邊敬三院長

 渡邊敬三(わたなべ・けいぞう)
 近畿大学医学部を卒業後、同眼科学教室に入局し、大阪府和泉市の府中病院(現府中アイセンター)に勤務。オーストラリア・シドニーでの研究留学などを経て、帰国後は同大学病院眼科で医学部講師として、白内障外来および角膜・ドライアイ外来を担当する。2016年に大阪府熊取町の南大阪アイクリニック院長に就き、多数の白内障手術を手掛けている。
 診療の傍ら、オウンドメディア「白内障LAB」やYOUTUBEチャンネルで白内障や白内障手術の情報を発信している。


【画像出典】白内障LAB

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