医師に質問したいとき 家庭の医学

 最近では、医師の側から積極的に情報を伝え、同意を得たうえで治療にあたるインフォームド・コンセントや、疑問点が解消されないようなときに、ほかの医療関係者の意見を聞くこと(セカンドオピニオン)がおこなわれています。
 しかし、医師と患者の関係は、旧来の考えからすると、ややもすれば患者さんの側からは、なかなか正面きって医師に向かってものが言えない、という状況がありました。こんなことを質問すると、気をわるくして医師との関係が、のちのちうまくいかなくなりはしないか、といったような危惧が患者さんの側にはあったものです。
 しかし、医学はけっして万能万全ではなく、あらゆる仮定や利益・損失のバランスのうえに成り立っています。患者さんはあらゆる機会を通じて、その不確定部分について十分に理解することが保証されています。医師もそのことについて、患者さんに十分な説明をしなければならない、と考えるようになりました。
 ですから、わが国ではあらゆる疑問を医師に質問する権利を患者さんは有しています。医師は責任をもって十分な説明をおこない、患者さんはそれらの説明を聞いて、十分に理解する、つまり共通理解が大切だということです。
 このことは、逆に医師にかかるときに、人任せにはできないという側面を有しています。自分の人生観、社会観、歴史観、生きかた、死にかた、人生への姿勢をある程度決めておかないと、質問して医師から得た回答に対してどうしたらいいか、決まらないという状況が起こりえます。また、合理的な選択はなにか、ということを自己責任で決定しなくてはならなくなります。
 今後、自己責任のルールは、ますます確立されていくことになると思われます。医療事故に対する、社会の医療側に対する追及が厳しくなればなるほど、生きるも死ぬも患者さん個人の考えかた(ハイリスクハイリターンかリスク回避、結果受容か)に、医師は従うようになると考えられます。
 それだけ、患者さんは自分の選択をより確実に実行してくれる医師を選ぶ必要があるわけで、社会に医療側の真実の情報が、公開される必要が高まりました。実際、病院はホームページなどで自ら積極的に情報を公開する義務が負わされています。