正中頸嚢胞、側頸嚢胞〔せいちゅうけいのうほう、そくけいのうほう〕 家庭の医学

 先天性ですが、小児期から青年期になって発生することの多い病気です。くびのまん中で甲状軟骨とその上方にある舌骨との間に生じるのが正中頸嚢胞で、外側にずれて生じるのが側頸嚢胞です。正中頸嚢胞は先天性頸部腫瘤の約70%を占めるといわれています。
 嚢胞とは、ふくろの中に粘液がたまった比較的やわらかいかたまりで、特に症状はないのですが、もともと皮膚につながる管があったり、感染を起こしてふくろがやぶれたりすると、中の粘液が皮膚の表面に滲み出します。この状態を瘻(ろう)と呼びます(正中頸瘻、側頸瘻)。ごくまれに本疾患ががん性の変化をきたすことがあるといわれています。
 治療は、手術による完全摘出です。

(執筆・監修:埼玉医科大学 名誉教授 中塚 貴志)
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