免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は悪性黒色腫の治療に革新的な進歩をもたらし、現在では標準治療の一端を担っている。しかし治療中止のタイミングがまだ明確になっていないという課題を抱えている。ドイツ・Technical University of MunichのKristine E. Mayer氏らは悪性黒色腫患者の観察研究を対象に、ICI奏効後の治療中止と生存率の関連についてシステマチックレビューとメタ解析を実施。治療中止を考慮しうるICI投与期間を見いだしたとJEADV(2025年4月4日オンライン版)に報告した(関連記事「免疫CP阻害薬による消化器障害、どう対応?」)。
ICI治療を中止した20件の研究1,832例を対象にメタ解析
悪性黒色腫は再発率が高いため、ICIで副作用なく奏効を得た症例では治療を中止する時期の判断が難しい。さらに、治療の長期化には免疫関連有害事象(irAE)のリスクが高まるとともに、経済的負荷も増大するという問題もある。ICI治療の適切な中止時期を見極めるには治療中止予後の評価が必要であるが、前向きの臨床試験は数えるほどしかない。
そこでMayer氏らはICI治療中止後の生存率に関する研究について、PubMed、EMBASE、Cochrane Central Register of Controlled Trialsを検索。2024年5月15日までに報告された研究から、18歳以上の転移性悪性黒色腫患者20例以上を含み、ICI中止後の追跡(12カ月以上)の評価が適切に行われた20件を抽出した。
解析対象である1,832例の治療中止理由、奏効状態、治療内容、治療期間についてランダム効果モデルを用いたメタ解析を行い、無増悪生存(PFS)に及ぼす影響を評価した。
主治医の同意のもとの中止、CR達成後の中止では効果が持続
解析の結果、全例における治療中止1年および3年後のPFSは0.86(95%CI 0.80〜0.91)および0.71(同0.64〜0.77)と、多くの症例で中止後もICIの効果が持続していることが示唆された。全生存も治療中止1年後は0.96(同0.91〜0.99)、3年後は0.86(同0.79〜0.92)と良好であった。
主治医の同意のもと選択的に治療中止した群とirAEで中止を余儀なくされた群との比較では、1年後PFSは選択的中止群で0.91(95%CI 0.85〜0.95)と高く、irAEによる中止群は0.79(同0.67〜0.89)と低かった。
奏効状態別に見ると、完全奏効(CR)群の治療中止1年後PFSは0.94(95%CI 0.91〜0.97)と、部分奏効(PR)群の0.79(同0.69〜0.87)または安定(SD)群の0.66(同0.52〜0.79)に比べ有意に高かった(いずれもP<0.0001)。
抗PD-1抗体単剤群と抗PD-1抗体+抗CTLA-4抗体併用群を中止1年後のPFSは、単剤群が0.89(95%CI 0.84〜0.93)と併用群の0.78(同0.51〜0.96)を有意に上回った(P<0.0001)。
ICI治療2年以上の症例が治療中止の候補
治療期間についてはICI投与1年未満、1〜2年、2年超の3群に層別化して比較した。その結果、治療期間が長いほど中止1年後PFSが高く、2年超群は0.95(95%CI 0.84〜1.00)、1〜2年群は0.91(同0.85〜0.96)で、1年未満群は0.82(同0.70〜0.91)にとどまった。
以上の結果からMayer氏らは「ICI治療は有効性が高く、治療中止後も再発抑制効果が続いている可能性が示唆された。今回の検討には限界はあるものの、ICI治療を少なくとも1年継続した後に中止を視野に入れ始め、2年以上経過した症例がその候補になると考えられる」と結論した。
(編集部)