紫外線曝露は皮膚がんの主要な危険因子である。光感受性を高める光感作性薬を使用している人では、紫外線の影響をさらに受けやすくなると考えられる。しかし既報では、光感作性薬の使用と皮膚がん発症との関連に一貫した結論は得られていない。スウェーデン・Skåne University HospitalのGustav B. Christensen氏らは同国女性を対象とした大規模コホートデータを基に前向きな検討を行い、エストロゲンおよび利尿薬が皮膚がんのリスクを高めるとの結果をPhotodermatol Photoimmunol Photomed2025; 41: e70013)に報告した(関連記事「サイアザイド系利尿薬で皮膚がんリスク上昇」)。

光感作性薬9グループと3種の皮膚がんの関連を検討

 Christensen氏らが検討に用いたMelanoma Inquiry of Southern Sweden(MISS)研究は、1990年時点に南スウェーデン在住の1925〜65年生まれの女性から暦年ごとに1,000例ずつを抽出し、そのうち参加に同意した約3万例から成る大規模コホート。今回の検討では2008年までに皮膚がんと診断された者は除外し、2008〜18年の追跡が可能だった2万6,110例を解析対象とした。

 参加者には10年ごとにアンケートを実施し、今回は参加時と初回の追跡アンケートから紫外線曝露、生活習慣など皮膚がんの危険因子についてのデータを収集した。薬剤の使用状況は処方データが登録されたSwedish Prescribed Drug Register(SPDR)から取得した。

 光感作性薬は世界保健機関(WHO)が作成した解剖治療化学分類法(ATC分類)に基づき、①糖尿病治療薬、②利尿薬、③β遮断薬、④カルシウム拮抗薬(CCB)、⑤アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬およびアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)、⑥プロトンポンプ阻害薬(PPI)、⑦非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、⑧抗菌薬、⑨ホルモン補充療法−の9つのグループに分けた。

 同氏らは光感作性薬9グループと皮膚がん3種〔皮膚扁平上皮がん(cSCC)、基底細胞がん(BCC)、悪性黒色腫(cM)〕のリスクについて、紫外線曝露などを調整した多変量Cox回帰分析を行った。さらに、1日当たりの投与量を解析し、用量と皮膚がんリスクの関係も検討。なお、多変量Cox回帰分析の対象は、同検討に要するデータ全てを有する2万1,062例とした。

エストロゲンは3種の皮膚がんリスクと有意に関連

 検討の結果、皮膚がんと独立した関連が認められたのはホルモン補充療法および利尿薬であった。ホルモン補充療法は今回検討した3種の皮膚がんリスクと関連しており〔BCC:ハザード比(HR) 1.24、95%CI 1.11〜1.39、P<0.05、cSCC:同1.23、1.03〜1.47、P<0.05、cM:同1.31、1.01〜1.69、P<0.05〕、薬剤別に見るとエストロゲンがその主因であることが示唆された。また、エストロゲンの用量依存的にBCCとcMのリスクが高まる傾向を認めた。

 利尿薬はグループ全体ではcSCCとの有意な関連が認められた(HR 1.53、95%CI 1.27〜1.84、P<0.05)。薬剤別ではループ利尿薬がcSCCと関連し(同1.60、1.29〜1.98、P<0.05)、用量依存的なリスク上昇も認められた。サイアザイド系利尿薬はBCC(同1.25、1.09〜1.44、P<0.05)およびcM(同1.41、1.03〜1.93、P<0.05)のリスク上昇と関連していた。

 NSAIDは全体では皮膚がんリスクとの間に明確な関連を認めなかったが、高用量群ではBCCとcSCCのリスク上昇が見られた。

 以上の結果から、Christensen氏らは「エストロゲンと利尿薬の使用は、皮膚がんリスク上昇との有意な関連を認めた。医療者はこれらの薬剤を使用している患者に対して、紫外線曝露の制限や定期的な皮膚科検診の受診を助言することが望ましい」としている。

(編集部)