細菌による皮膚感染症で、再発しやすい蜂窩織炎。近年、肥満がその発症リスクを高める可能性が示唆されている。米・Stony Brook UniversityのKimi Gabriella Taira氏らは、肥満と蜂窩織炎の関連性をシステマチックレビューとメタ解析で検証。その結果、両者の間には有意な関連性が認められたとJMIR Dermatol2024; 7: e54302)に報告した(関連記事「蜂窩織炎の鑑別にサーモとALT-70が有用」「圧迫療法が下肢蜂窩織炎の再発を抑制」)。

再発リスクの高い急性の皮膚感染症

 蜂窩織炎は主に黄色ブドウ球菌や連鎖球菌が原因となる急性の皮膚感染症。皮膚の破損部分から細菌が侵入し、真皮層や皮下組織、筋膜に広がることで炎症が生じる。特に下肢に多く見られるが、体のどの部位にも発症する可能性がある。一度経験すると再発リスクが高いとされている。

 近年の研究から、肥満が皮膚や軟部組織の感染リスクを高める可能性が示唆されている。肥満は心血管疾患や糖尿病、がんといった全身性疾患と関連することは広く知られているが、感染症に対しても影響を及ぼすと考えられている。しかし、肥満などの全身的な要因が蜂窩織炎の発症に重要な役割を果たすか否かについては、一貫した知見は得られていない。

 そこでTaira氏らは、蜂窩織炎と肥満の関連性を調査する目的でシステマチックレビューとメタ解析を実施した。

オッズ比は肥満者で2.67、男性で1.63

 Taira氏らはOvid MEDLINE、EMBASE、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Web of Scienceのデータベースから、2021年3月13日までに公開された蜂窩織炎とBMIの関連性を検討した観察研究(横断研究、症例対照研究、コホート研究を含む)の文献を検索。最終的に9件・6万8,148人がメタ解析の対象となった。

 解析の結果、肥満者(BMI 30以上)における蜂窩織炎発症のオッズ比は2.67であることが明らかになった(95%CI 1.91〜3.71)。一方で、蜂窩織炎と過体重(BMI 25〜29.9)には有意な関連は見られなかった(OR 1.69、95% CI 0.99〜2.88)。また、蜂窩織炎患者は男性である確率が高く(OR 1.63, 95%CI 1.12〜2.38)、危険因子として性別が関連していることが示唆された。

予防には健康的な体重の維持を

 Taira氏らは「今回の研究から、蜂窩織炎と肥満の関連性が確認された。健康的な体重を維持することが、蜂窩織炎の予防に役立つと考えられる」と結論している。

 なお、同氏らによると、肥満と蜂窩織炎が関連する機序は明らかにされていないが、肥満者における脂肪組織の増加が感染症への感受性を高めるメカニズムとして、①脂肪組織が主要なアディポカインを介して免疫抑制作用を体に及ぼす(Biochem Biophys Res Commun 2004; 323: 630-635)、②リンパの流れが阻害されることで細菌増殖や組織への酸素供給の低下が生じる(Front Physiol 2020; 11: 459)−といった仮説が提唱されているという。

(編集部・長谷部弥生)