痔核:痔核急性症(血栓性外痔核、嵌頓痔核)、内痔核、外痔核〔じかく:じかくきゅうせいしょう(けっせんせいがいじかく、かんとんじかく)、ないじかく、がいじかく〕

 痔核は、長年の生活習慣から血管や筋肉組織や支持組織を含む肛門クッションが変性肥大し、肛門管外に脱出するようになった病態です。


 肛門クッションは生まれながら誰にでもあります。肛門管の上皮と内括約筋(かつやくきん)との間にある組織で、血管や筋肉組織や結合組織などからできており、これによって完全に肛門を閉鎖することができます。肛門の密閉性を高めるパッキングの役割を果たしていますが、それがずれて出てくるようになるのです。歯状線(しじょうせん)より直腸側の内痔核と皮膚側の外痔核があります。徐々に大きくなっていきます。女性の場合、妊娠分娩(ぶんべん)をきっかけに肛門クッションがはれて痔核を形成することもあります。

[症状]
 内痔核は、その脱出の程度によってグレード(進行度)がⅠからⅣまで分類されています。

●内痔核の脱出の進行度
グレード症 状
排便時に肛門管内で痔核は膨隆するが、脱出はしない
排便時に肛門外に脱出するが、排便が終わると自然に戻る
排便時に脱出し、手などで戻すことが必要である
常に肛門外に脱出し、戻すことができない


 しかし、グレードⅣかと思っても内痔核ではなくて外痔核の場合もあるので、診断は専門的に受けるのがよいでしょう。
 その他痔核のおもな症状は出血と腫脹・疼痛(とうつう)ですが、出血は慢性的な内痔核、腫脹・疼痛は急性の痔核の症状と考えてよろしいです。内痔核の出血は排便時の紙に付着する程度からポタポタしたたり落ちたり、シューと走り出たりといろいろですが、いずれも明るい色の鮮血で痛みを伴いません。しかし、出血もあまり放置してしまうと貧血になりますので、続く場合は専門医を受診したほうがいいでしょう。
 腫脹・疼痛は、痔核内に血栓というしこりを形成して急なはれと痛みを招いている状態で、内痔核にも及んだものは嵌頓痔核、外痔核のみのときは血栓性外痔核と診断されます。前述のグレードのどの段階でも発症する可能性があります。便秘や下痢のときの過度のいきみや、腹圧のかけすぎ、長時間の座位などで腫脹します。触れると有痛性のしこりが肛門出口にできています。

[治療]
 痔核急性症としての嵌頓痔核や血栓性外痔核は、内服薬や軟膏などの外用薬で改善可能です。あまり大きくて疼痛がひどい場合は、専門医のところで相談するといいでしょう。
 痔核の出血は、便通の改善や坐薬軟膏といった保存的治療によって改善が期待できます。それでも出血がおさまらないときには、硬化療法といって出血する内痔核に薬液を注射して固めてしまう方法もあります。
 脱出するようになった痔核は、薬だけでは改善はむずかしいです。脱出を改善しようとするのなら手術療法を選択します。もちろん放置することも可能で手術をしなければ手遅れになる病気ではありません。痔核の程度や患者さんの条件や希望などにより術式を考慮します。

■手術方法
1.硬化療法
 5%フェノールアーモンドオイル注射療法は日帰りにて麻酔不要でおこなえます。出血性内痔核に適応です。
2.ALTA(aluminum potassium sulfate・tannic acid)療法
 硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸の注射療法にて出血性、脱出性の内痔核を治療する痛みのない方法で、短期入院あるいは日帰り手術として近年全国でおこなわれています。3年後の再発率は10%程度といわれます。グレードⅡ~Ⅲの内痔核に適応です。
3.結紮(けっさつ)療法
 脱出してくる内痔核をゴム輪あるいは糸にて縛って1~2週間で壊死(えし)脱落させる方法で、外来治療あるいは短期入院治療が可能です。グレードⅡ~Ⅲの内痔核に適応です。
4.PPH(procedure for prolapse and hemorrhoids)
 脱出する内痔核の直腸側において、専用の器械を使用して粘膜を筒状に切り離しながらつり上げ固定することによって、脱出する痔核をもとの位置に戻す方法です。直腸の無痛域で操作するので、術後の疼痛がないのが特徴です。グレードⅡ~Ⅲの内痔核に適応です。
5.結紮切除術
 痔核に対する王道的手術法で、流入する動脈を縛り痔核を切除する方法で、手術治療法のなかではもっとも根治性が高い(再発が少ない)術式です。痔核の数だけ切除しますが、3カ所に及ぶことが通常です。グレードⅢ~Ⅳの内痔核に適応です。
 手術をしたからといっても、不適切な排便習慣(便秘、下痢、長いトイレ時間)などが続くと何年かしてまた痔核が育ってくる人がいます。ですので、生活習慣の見直しが必要です。食生活は食物繊維も意識したバランスのよい食事にしましょう。酒や香辛料で痔になるわけではありませんが、手術後や肛門に疼痛や傷、炎症があるときは控えましょう。便通は半日に1度から3日に1度くらいまでは個人差であって異常とはいえません。毎日なくても自然排便を心掛けましょう。安定した食事や睡眠は大事であり、適度な水分摂取や運動なども有効です。それでも便通異常が続く場合は、大腸の精密検査を含め消化器科で相談するといいでしょう。
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