肛門周囲膿瘍(直腸周囲膿瘍)〔こうもんしゅういのうよう(ちょくちょうしゅういのうよう)〕 家庭の医学

 肛門の周囲がかたくはれて、膿(うみ)をためた状態をいいます。肛門の中からと肛門周囲の皮膚からの感染経路に分かれます。肛門の中からの場合、歯状線(しじょうせん)上の小さなくぼみ(肛門小窩〈しょうか〉といって誰にでもある正常な形態です)から細菌が入り込んで感染するタイプや切れ痔の傷から感染するタイプなどがあり、これらは痔瘻(じろう)になる場合が少なくありません。皮膚からの感染では、おできや毛嚢炎(もうのうえん)、膿皮症アテロームの感染などがあります。

[症状]
 感染後何時間かのうちに急激に進み、寝るのも座るのもたいへんなくらいに痛く、38℃以上の熱が出ることもよくあります。膿がたまる部位は、皮膚に近い浅い部位から直腸周囲の深い部位までいろいろあります。深い部位だとあまり痛みがなく、高熱のみという場合もあります。CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像法)検査や超音波(エコー)検査などで診断に至る場合もあります。

[治療]
 自然に皮膚がやぶれて膿が出ることもありますが、一刻も早く応急処置として救急外来でもよいので切開排膿を受けるべきです。深い場合はのちのちの治療も考慮して専門の施設で受けたほうがよいでしょう。下痢が続いたときに起こりやすい傾向がありますので、便通にも注意が必要です。いずれにしても、切開排膿して炎症がいったん落ち着いてから原因を診断していきます。

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