動植物によるけが 家庭の医学

 近年は、四季を問わずハイキング、登山、キャンプなどで自然に親しむ機会がふえてきています。これは、人間の活動範囲と野生動植物の生息範囲とが近接、重複することになり、動植物による健康障害・傷害も増加しています。また、昨今のペットブームで、ニシキヘビやワニガメ、アライグマなど、本来日本に生息しない動物が輸入されるようになりました。そのほか、輸入木材にサソリ、ヒアリなどの有害動物がひそみ、国内に持ち込まれる場合もあります(特定外来生物)。
 人、物が日常的・短日時で大量に移動している国際化の波が、日本国内の有害動植物を増加させている一面もあります。
 さらに、これらの輸入動植物に付着した、あるいは体内にひそんだ微生物が、いままで日本国内では知られていない重篤な感染症をもたらす危険性もあります。動物は「歯磨き」をしないので、その歯は雑菌だらけです。動物にかまれた傷(咬傷〈こうしょう〉)では、傷口に細菌感染を起こし化膿する率が非常に高いことに注意をはらう必要があります。なお、人間も量的には少ないだけで、細菌、ウイルス、真菌の感染源の一つであることに変わりないことを覚えておきましょう。

(執筆・監修:社会医療法人恵生会 黒須病院 内科 河野 正樹)