妊娠貧血〔にんしんひんけつ〕 家庭の医学

 女性は月経があるためと、男性にくらべて食べる量が少ないため貧血になりやすいのですが、最近では偏食やダイエットが原因の貧血も少なくありません。
 胎児の成長には母体の中の貯蔵鉄が使われますが、貯蔵量が少ない場合は母体に必要な鉄分が胎児に優先的に供給されるため、母体は貧血になるのです。血液中のヘモグロビン値が11g/dL以下は貧血ですが、症状(息切れ、動悸〈どうき〉、疲れなど)は9g/dL以下にならないと出てきません。胎児が大きくなるとそれだけ鉄分を必要とするので、貧血は妊娠後期になるとたいへん多いのです。
 貧血のまま分娩(ぶんべん)になると、母体は疲労のため微弱陣痛になったり、胎児への酸素供給が減少したり、分娩時の出血が多量になり輸血の可能性が高くなるなどの危険があります。予防するためには鉄分、たんぱく質、ビタミンなど食生活が重要です。鉄剤の服用で胃が痛くなったり吐き気が強い場合、便秘や下痢をする場合は医師とよく相談してください。サプリメントを利用するのも一つの方法です。

(執筆・監修:恩賜財団 母子愛育会総合母子保健センター 愛育病院 産婦人科 部長 竹田 善治)
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