小児結核〔しょうにけっかく〕

[原因]
 結核菌の感染によって起こります。結核菌が肺に定着すると、そこに初感染原発巣をつくります。結核菌は増殖し、所属リンパ節に運ばれリンパ節病変をつくります。この両者をまとめて初期変化群と呼びます。初期変化群の悪化したものが初期肺結核症です。
 そのほか、胸膜炎を生じたり、リンパや血液の流れによって粟粒(ぞくりゅう)結核や結核性髄膜炎が起こります。わが国の小児結核の減少にはめざましいものがあり、最近では発病児が年間50人前後となっています。
 小児は発病率が高く、早期に発病します。また、全身に進展・拡大しやすく、髄膜炎や粟粒結核の割合が高いのが特徴です。家族感染が多く、感染源の確認が可能です。

[症状]
 なんらかの症状があって医療機関を受診して診断されるのは約半数で、接触者検診で発見される患児は無症状であり小児結核の約40%を占めます。症状があっても不定で、微熱、不きげん、食欲不振、体重増加不良、体重減少などです。胸膜炎を起こすと発熱、胸痛、呼吸困難を呈します。粟粒結核や結核性髄膜炎でも特別な症状はなく、発熱、食欲不振などの症状が中心です。

[診断]
 家族感染が多いので、家族や接触者に微熱やせきが続いている人がいないかどうかなどをよく調べます。ツベルクリン反応や血液検査のインターフェロンγ(ガンマ)遊離試験は陽性を示しますが、陰性の場合でも必ずしも未感染を意味しません。
 感染からツベルクリン反応が陽転するまでは3~8週間かかり、髄膜炎や胸膜炎の発病初期では陰性になることがあるからです。インターフェロンγ遊離試験はツベルクリン反応と違って、BCGや非結核性抗酸菌の影響を受けにくい特徴がありますが、感染から陽性になるまで2~3カ月かかります。喀たん、胃液、胸水などを顕微鏡でみて結核菌がみとめられるのは3割程度です。培養検査は陽性率が4割程度で、結果が出るのが4~8週間とおそいことが欠点です。
 培養の代わりに菌の遺伝子の存在を調べる方法(PCR法)が確立され、ほかの検査結果もより早くわかるようになりました。小児結核の9割は胸部の結核なので、胸部X線検査は大切な検査です。胸部CT(コンピュータ断層撮影)検査も必要な場合があります。

[治療]
 発病した場合は、3剤の抗結核薬で治療をおこないます。感染源と濃厚な接触があり、感染の可能性が高いと判断される児に対しては予防内服をおこないながら、経過観察します。
 治療後は、数カ月の経過で改善傾向を示すことがほとんどです。しかし、治療開始が遅れるほど主要病巣である肺や気管支に後遺症を残す可能性が高くなります。特に結核性髄膜炎には注意が必要で、治療を適切におこなっても高率に発達遅滞、脳性まひなどの神経学的後遺症を残します。特に2歳以下では死亡率も高いです。
 なお、学校医などの医師によって感染のおそれがないとみとめられるまで登校(園)停止です。結核

(執筆・監修:自治医科大学 名誉教授/茨城福祉医療センター 小児科 部長 市橋 光
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