HIV感染症(エイズ)〔HIVかんせんしょう〕 家庭の医学

[原因]
 HIV(human immunodeficiency virus)感染により、ウイルスや細菌感染などから身を守っている免疫機能が破綻するエイズ(AIDS:acquired immunodeficiency syndrome、後天性免疫不全症候群)が発症する状態に進行していきます。
 小児への感染経路は、母児間の垂直感染が主であり、子宮内感染、産道感染、母乳感染の3つがあります。唾液や涙にも少量のHIVが含まれていますが、同居、食器の共有などでは感染しません。

[症状]
 健康な人では感染しない、あるいは感染しても重症とならないような、サイトメガロウイルス、ヘルペスウイルス、真菌、カリニなどに感染して肺炎などを起こします。小児では、くり返す重症細菌感染症が多いのが特徴的です。数年から十数年の経過でAIDSを発病します。
 胎内感染では頭が小さかったり、両眼が離れていたり、額が突出していたりする形態異常を伴うことが多くなります。新生児、乳児例では早期から脳症、発達の遅れ、脳萎縮、脳の石灰化などのほか、貧血、肝臓や脾(ひ)臓のはれ、発育不全がみられます。

[検査]
 血液検査で、HIVが感染するリンパ球が破壊され、減少します。この細胞の数により、AIDS発病の危険性があきらかになります。
 診断は抗体の測定による感染の証明でなされますが、感染後6~8週間は抗体は陰性です。また、乳児期は母親からの抗体が移行してくるので、抗体検査ではなく核酸増幅法(検出したい特定のウイルスの遺伝子を試験管内でふやすことによって、高感度に検出する方法)を用います。

[予防]
 新生児への感染を防ぐには、HIVに感染した妊娠女性が抗HIV薬を服用することです。また、帝王切開による分娩、人工栄養で育てることも感染のリスクを減らします。

[治療]
 抗HIV薬を3剤併用して抑え込む治療が中心です。

【参照】感染症:後天性免疫不全症候群

(執筆・監修:自治医科大学 名誉教授/茨城福祉医療センター 小児科 部長 市橋 光
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