水痘(水ぼうそう)〔すいとう(みずぼうそう)〕 家庭の医学

[原因]
 患者の唾液や発疹(ほっしん)中の水痘ウイルスによる空気(飛沫核)感染、飛沫感染、接触感染で起こります。1年を通じて発症しますが、冬から春にかけて流行します。伝染力は麻疹についで強く、発疹が出現する1~2日前から水疱(すいほう:水をもった発疹)がかさぶたになるまで伝染力があります。2012年から予防接種を2回おこなったことにより、感染者数は8分の1までに減少しました。一度かかると一生免疫が得られます。

[症状]
 潜伏期は2~3週です。発疹は、はじめは小さな赤い斑点で、2~3日のうちに水疱、さらにかさぶたになります。3日間は新しい発疹が次々にできるため、水疱やかさぶたなど、いろいろな時期の発疹が混在します。

 発疹は胴体や顔に多く手足は少ない分布を示し、かゆみが強く出ます。髪のはえている部分や口の中にもできます。発疹とほぼ同じ時期に中等度の発熱をみとめ、2~3日続きます。発疹の数や大きさの程度と発熱の程度は相関します。

[治療]
 重症には抗ウイルス薬のアシクロビルを用います(内服する場合と注射する場合がある)。解熱薬のアスピリンを内服していると、ライ症候群という脳と肝臓が障害される死亡率が高い病気になりやすいことが知られているので、治療に用いてはいけません。
 口の中に発疹ができると食事がしみるので、やわらかく薄味の食べ物を与えます。発疹には石炭酸亜鉛華軟膏(なんこう)を塗ると、水疱が乾き、かゆみが軽くなります。発疹はかきこわさないよう注意が必要です。かきこわしたり細菌感染を起こしたときは、抗菌薬の入った軟膏を塗ります。水痘は学校感染症に指定されており、すべての発疹が痂皮(かひ)化する(かさぶたになる)まで、登校(園)停止です。

[予防]
 2回の水痘ワクチン接種により予防が可能です。患者に接触(曝露)後の予防法には3種類あります。接触後72時間以内に水痘ワクチンを接種すると発症が予防できます。接触後7~9日後からアシクロビルを1週間内服することによっても、予防が可能です。また、96時間以内に免疫グロブリンを注射する方法もあります。

【参照】感染症:水痘

(執筆・監修:自治医科大学 名誉教授/茨城福祉医療センター 小児科 部長 市橋 光
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