ヘリコバクター・ピロリ感染症〔へりこばくたー・ぴろりかんせんしょう〕

 これまで胃の中には細菌はすみつけないと考えられていましたが、1983年に胃からヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)という菌が発見され、その後の研究によってそれまでは加齢によって起きると考えられていた慢性胃炎や再発をくり返す胃・十二指腸潰瘍の原因として注目されるようになりました。ヘリコバクター・ピロリは自らウレアーゼというアンモニアをつくる酵素をもつことによって、胃の中の強酸性の環境のなかで生き延びることができるのです。
 ヘリコバクター・ピロリは胃潰瘍の60~80%に、十二指腸潰瘍の90~95%に陽性であると考えられており、ヘリコバクター・ピロリ菌の発見によって消化性潰瘍の治療に対する考えかたは大きく変化しました。ヘリコバクター・ピロリの除菌治療は、プロトンポンプ阻害薬(PPI)と複数の抗菌薬をあわせて1週間服用します。
 ヘリコバクター・ピロリの発見により再発潰瘍に対する治療法が劇的に進歩したことは確かですが、近年ヘリコバクター・ピロリの除菌に成功しても100%消化性潰瘍の再発を防ぐことができないという報告もあり、ヘリコバクター・ピロリの除菌は消化性潰瘍の治療に100%万能ではないのかもしれません。
 また、ヘリコバクター・ピロリ感染はある種の胃がんの原因と考えられており、除菌がすすめられます。

(執筆・監修:順天堂大学大学院医学研究科 教授〔食道胃外科〕 梶山 美明)
医師を探す