花粉症(花粉アレルギー)〔かふんしょう(かふんあれるぎー)〕
[症状]
花粉が飛散する季節に一致して、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの鼻症状(アレルギー性鼻炎)、目のかゆみ、流涙(りゅうるい)、異物感、充血などの眼症状が出現します。鼻、眼症状が強いときには鼻痛、咽頭(いんとう)腫脹感、咽頭痛、せき、腹痛、下痢、皮膚炎、頭痛、全身倦怠(けんたい)感、微熱などもみられます。ぜんそくを新たに発症させることはまずありませんが、ぜんそくの患者さんの過半数が花粉症やアレルギー性鼻炎をもっています。
なお、北海道に多いシラカバ花粉症患者の約半数では、シラカバと抗原が類似したリンゴ、サクランボ、西洋ナシ、モモなどを食べると、30分以内に口内にかゆみやイガイガ感が生じる口腔(こうくう)アレルギー症候群(花粉食物アレルギー症候群ともいいます)を合併することが知られています。北海道以外の地域でも、シラカバと同じくカバノキ科に属するハンノキで花粉症をもっていると、口腔アレルギー症候群が起こりやすくなります。花粉の飛散時期がスギと重なるので、ハンノキ花粉症は自分では気づきにくい病気といえます。
[原因]
スギ、ヒノキ、アカマツ、カモガヤなどのイネ科、ヨモギ、ブタクサ、カナムグラなどが頻度の高いアレルゲンですが、その多くは花粉が風で運ばれる風媒花(ふうばいか)です。
地方によって時期は多少ずれますが、早春~春にはスギ、ついでヒノキ、マツ、ブナなどの樹木、初夏~夏にはカモガヤ、オオアワガエリなどのイネ科植物、夏~秋にはヨモギ、ブタクサなどのキク科植物、カナムグラ(クワ科)の花粉が飛散し、花粉症の原因となります。
[発症のしくみ]
花粉に対するIgE抗体によるⅠ型(アナフィラキシー型)反応(参照:アレルギーの型)が、花粉にさらされる鼻粘膜、眼結膜といった局所で起こるために発症します。
[診断]
毎年同じような季節に、鼻、眼症状が出現するときは、その時期に飛散する花粉アレルギーである可能性が考えられます。鼻の症状だけだとかぜと区別がつきにくいこともありますが、同時に眼症状もあると、アレルギーの可能性がきわめて高いといえます。
鼻水は水様性(水っ鼻)であることがふつうですが、粘っこいとか黄色のときには感染症や副鼻腔炎のこともありますので、耳鼻科医に受診することをおすすめします。
通年性に鼻、眼症状がある場合は複数の花粉アレルギーのこともありますが、花粉よりもハウスダスト、ダニ、カビ、およびイヌ、ネコなどのペットへのアレルギーである可能性が考えられます。
飛散時期の花粉と反応するIgE抗体を血液検査で測定したり、皮膚テストを受けて陽性ならその花粉による花粉症と診断されます。皮膚テストとしては、プリックテストが簡便なのでよく用いられます。抗原液を滴下して皮膚を針先で出血しない程度に穿刺(せんし:プリック)し、15~20分後の皮膚反応(発赤〈ほっせき〉と腫れを計測)で判定します。
[治療][予防]
飛散量の多いときは、花粉にさらされないよう帽子、眼鏡、マスクをします。マスクは花粉用にフィルターのついたものが市販されています。外出から帰ったら外で衣服をたたいて花粉を落とす、洗顔をする、外気で換気をおこなったときは掃除をする、寝具を外では干さないなども有効です。
薬物療法としては、飛散初期(症状の強い人はその1~2週間前から)から抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬を服用します。症状があるときは、抗アレルギー薬や副腎皮質ステロイド薬を点鼻したり、抗アレルギー薬を点眼します。なお、抗アレルギー薬は広く使われる用語であり、抗ヒスタミン薬や、他のいくつかの作用をもった薬を含んでいるので、一般社会では抗アレルギー薬と抗ヒスタミン薬は似た意味で使うこともあります。
重症度に応じて、これらの薬の組み合わせをふやしていきます。特に鼻づまりが強いときは副腎皮質ステロイド薬の点鼻、抗アレルギー薬の一つの抗ロイコトリエン薬の服用、血管収縮薬の点鼻をおこないます。ただし、血管収縮薬の点鼻は即効性がありますが、指示された回数以上に用いたり使用を長く継続すると、使用後にかえって粘膜の血管が拡張したり、粘膜が萎縮することもあります。そのため症状が改善されないときでも、点鼻は指示回数以内にとどめ、ほかの薬と併用して症状を抑えます(参照:花粉症・アレルギー性結膜炎)。
最近は、抗アレルギー薬と血管収縮薬を繰み合わせた内服薬も使われますが、鼻づまりが強い時期に限定して内服するようにし、シーズン中ずっと続けるのは避けるのが望ましいです。副腎皮質ステロイド薬の点眼は、眼症状が特に強いときに使われますが、眼圧が上昇して緑内障を引き起こしたり、白内障を起こしやすくなるので、眼科の医師に相談してから開始するほうがいいでしょう。
そのほか、スギ花粉の抽出液からつくられた舌下錠が減感作療法(アレルゲン免疫療法)に使われるようになりました。症状がない時期から開始して数年間(3年以上が望ましい)継続する間にからだが慣れることで、花粉にさらされても花粉症の症状が少なくすむという治療法で、経験の多い医師のもとでおこなわれています。同じような舌下治療薬はダニについても使われています。
(執筆・監修:帝京大学ちば総合医療センター 第三内科〔呼吸器〕 教授 山口 正雄)
花粉が飛散する季節に一致して、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの鼻症状(アレルギー性鼻炎)、目のかゆみ、流涙(りゅうるい)、異物感、充血などの眼症状が出現します。鼻、眼症状が強いときには鼻痛、咽頭(いんとう)腫脹感、咽頭痛、せき、腹痛、下痢、皮膚炎、頭痛、全身倦怠(けんたい)感、微熱などもみられます。ぜんそくを新たに発症させることはまずありませんが、ぜんそくの患者さんの過半数が花粉症やアレルギー性鼻炎をもっています。
なお、北海道に多いシラカバ花粉症患者の約半数では、シラカバと抗原が類似したリンゴ、サクランボ、西洋ナシ、モモなどを食べると、30分以内に口内にかゆみやイガイガ感が生じる口腔(こうくう)アレルギー症候群(花粉食物アレルギー症候群ともいいます)を合併することが知られています。北海道以外の地域でも、シラカバと同じくカバノキ科に属するハンノキで花粉症をもっていると、口腔アレルギー症候群が起こりやすくなります。花粉の飛散時期がスギと重なるので、ハンノキ花粉症は自分では気づきにくい病気といえます。
[原因]
スギ、ヒノキ、アカマツ、カモガヤなどのイネ科、ヨモギ、ブタクサ、カナムグラなどが頻度の高いアレルゲンですが、その多くは花粉が風で運ばれる風媒花(ふうばいか)です。
地方によって時期は多少ずれますが、早春~春にはスギ、ついでヒノキ、マツ、ブナなどの樹木、初夏~夏にはカモガヤ、オオアワガエリなどのイネ科植物、夏~秋にはヨモギ、ブタクサなどのキク科植物、カナムグラ(クワ科)の花粉が飛散し、花粉症の原因となります。
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | |
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スギ | ||||||||||||
ヒノキ科 | ||||||||||||
コナラ | ||||||||||||
ケヤキ | ||||||||||||
イネ科 | ブタクサ | ヨモギ | カナムグラ | |||||||||
[発症のしくみ]
花粉に対するIgE抗体によるⅠ型(アナフィラキシー型)反応(参照:アレルギーの型)が、花粉にさらされる鼻粘膜、眼結膜といった局所で起こるために発症します。
[診断]
毎年同じような季節に、鼻、眼症状が出現するときは、その時期に飛散する花粉アレルギーである可能性が考えられます。鼻の症状だけだとかぜと区別がつきにくいこともありますが、同時に眼症状もあると、アレルギーの可能性がきわめて高いといえます。
鼻水は水様性(水っ鼻)であることがふつうですが、粘っこいとか黄色のときには感染症や副鼻腔炎のこともありますので、耳鼻科医に受診することをおすすめします。
通年性に鼻、眼症状がある場合は複数の花粉アレルギーのこともありますが、花粉よりもハウスダスト、ダニ、カビ、およびイヌ、ネコなどのペットへのアレルギーである可能性が考えられます。
飛散時期の花粉と反応するIgE抗体を血液検査で測定したり、皮膚テストを受けて陽性ならその花粉による花粉症と診断されます。皮膚テストとしては、プリックテストが簡便なのでよく用いられます。抗原液を滴下して皮膚を針先で出血しない程度に穿刺(せんし:プリック)し、15~20分後の皮膚反応(発赤〈ほっせき〉と腫れを計測)で判定します。
[治療][予防]
飛散量の多いときは、花粉にさらされないよう帽子、眼鏡、マスクをします。マスクは花粉用にフィルターのついたものが市販されています。外出から帰ったら外で衣服をたたいて花粉を落とす、洗顔をする、外気で換気をおこなったときは掃除をする、寝具を外では干さないなども有効です。
薬物療法としては、飛散初期(症状の強い人はその1~2週間前から)から抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬を服用します。症状があるときは、抗アレルギー薬や副腎皮質ステロイド薬を点鼻したり、抗アレルギー薬を点眼します。なお、抗アレルギー薬は広く使われる用語であり、抗ヒスタミン薬や、他のいくつかの作用をもった薬を含んでいるので、一般社会では抗アレルギー薬と抗ヒスタミン薬は似た意味で使うこともあります。
重症度に応じて、これらの薬の組み合わせをふやしていきます。特に鼻づまりが強いときは副腎皮質ステロイド薬の点鼻、抗アレルギー薬の一つの抗ロイコトリエン薬の服用、血管収縮薬の点鼻をおこないます。ただし、血管収縮薬の点鼻は即効性がありますが、指示された回数以上に用いたり使用を長く継続すると、使用後にかえって粘膜の血管が拡張したり、粘膜が萎縮することもあります。そのため症状が改善されないときでも、点鼻は指示回数以内にとどめ、ほかの薬と併用して症状を抑えます(参照:花粉症・アレルギー性結膜炎)。
最近は、抗アレルギー薬と血管収縮薬を繰み合わせた内服薬も使われますが、鼻づまりが強い時期に限定して内服するようにし、シーズン中ずっと続けるのは避けるのが望ましいです。副腎皮質ステロイド薬の点眼は、眼症状が特に強いときに使われますが、眼圧が上昇して緑内障を引き起こしたり、白内障を起こしやすくなるので、眼科の医師に相談してから開始するほうがいいでしょう。
そのほか、スギ花粉の抽出液からつくられた舌下錠が減感作療法(アレルゲン免疫療法)に使われるようになりました。症状がない時期から開始して数年間(3年以上が望ましい)継続する間にからだが慣れることで、花粉にさらされても花粉症の症状が少なくすむという治療法で、経験の多い医師のもとでおこなわれています。同じような舌下治療薬はダニについても使われています。
(執筆・監修:帝京大学ちば総合医療センター 第三内科〔呼吸器〕 教授 山口 正雄)