ラテックスアレルギー 家庭の医学

 天然ゴム製品に接触あるいはその粉末を吸入したあと、接触部位にじんましんや湿疹が起こったり、全身性のじんましん・ぜんそく発作や呼吸困難、アナフィラキシーをひき起こすことがあります。天然ゴムに含まれるゴムの木の樹液成分(ラテックス)に対するアレルギー反応で、ラテックスアレルギーといいます。
 このアレルギー反応を起こしやすい人は天然ゴム製品に接触する機会が多い人で、特に職業的に天然ゴム製手袋を常用する医師や看護師では、5~15%の人がラテックスに対するIgE抗体が陽性であると報告されています。
 手荒れの人がゴム手袋をくり返し使う、ゴム手袋を使う手術を何度も受ける、あるいはゴム手袋などの表面に塗布されているパウダーを吸入することが、このアレルギーを起こす重要な経路の一つになっています。

[症状]
 ゴム製品に接触した皮膚にはじんましんや湿疹、パウダーが目に触れたときには結膜炎、吸入したときにはアレルギー性鼻炎など、症状は比較的軽いものが大多数です。ただし、時にぜんそく症状や全身性じんましん、アナフィラキシーショックに発展することもあり、みくびってはいけません。

[原因]
 原因となる天然ゴム製品は、ゴム手袋、チューブ、駆血帯などの各種の医療用具・歯科材料、輪ゴムやゴム風船、洗濯用のゴム手袋、コンドームなどさまざまです。このアレルギーの原因となる物質は、ゴムの木の樹液(ラテックス)に含まれる複数のたんぱく質が最終製品にまで残り、アレルゲンとして作用します。
 このアレルギーをもつ人のなかにはバナナ、アボカド、キウイ、クリなどを食べたときに口唇(こうしん)、咽頭(いんとう)などのかゆみ、腫脹などの口内アレルギー症状(口腔アレルギー症候群)をもつ人もおり、ラテックス、フルーツ両方へのアレルギー反応が生じる人をラテックスフルーツ症候群といいます。ラテックスが含有するたんぱく質と、これらフルーツのたんぱく質が共通の抗原性をもっていることが原因と考えられています。

[発症のしくみ]
 ラテックスに対するIgE抗体を有していて感作が成立している人において、即時型のⅠ型アナフィラキシー型反応(参照:アレルギーの型)が、ゴム製品にさらされた皮膚やすべりをよくするコーンスターチの粉末を吸入した鼻粘膜、気道で起こり、さらには全身で反応が起こるために発症します。

[診断]
 ゴム製品に接触したあとにアレルギー症状があり、ラテックスに対するIgE抗体が陽性のとき、ラテックスアレルギーを疑います。水で湿らせた片手や指(1本)に、天然ゴム手袋をはめることで症状が誘発されるかをみる負荷検査が診断確定に役立ちます。

[治療][予防]
 天然ゴム製品を使わないのが大事です。最近はゴム手袋なども天然ゴムを使わない合成ゴム製品が市販されています。ラテックスにより症状が出たときは、原因になるゴム製品の使用を中止し、ほかの原因によるアレルギーと同様の治療をします。
 なお、ラテックス手袋でアレルギー症状が生じる人のうち、一部はラテックスではなく手袋製造工程で使われる化学物質が原因のことがあります。アレルギーの原因がラテックスなのか、そのほかの物質なのかきちんと診断を受けたうえで、使っても大丈夫な手袋を探すという流れになります。

(執筆・監修:帝京大学ちば総合医療センター 第三内科〔呼吸器〕 教授 山口 正雄
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