動物アレルギー〔どうぶつあれるぎー〕 家庭の医学

 動物の毛、羽毛、ふけ、唾液、糞尿(ふんにょう)などを原因とするアレルギーです。

[症状]
 ネコ、イヌなどの毛、ふけによるアレルギー性鼻炎(くしゃみ、鼻水、鼻づまり)、結膜炎(目のかゆみ、涙、充血)、気管支ぜんそく(喘鳴〈ぜんめい〉、呼吸困難)、じんましんアトピー性皮膚炎が頻度の高い症状です。インコなどの小鳥やハトの糞、尿、羽毛などによる過敏性肺臓炎(急性あるいは慢性の乾いたせき、運動時の呼吸困難など)を起こすこともあります。

[原因]
 アレルギー性鼻炎、ぜんそくの患者さんでは室内で飼うネコ、マウス、ハムスター、モルモット、イヌなどの毛やふけ、マウス、ハムスターなどの尿が原因となることがあります。ウマ、ヒツジ、ウサギなどを飼育している場合にも、これらが原因のアレルギーを起こすことがあります。過敏性肺臓炎の原因となるのは鳥の糞、尿、羽毛などです。

[発症のしくみ]
 鼻炎、結膜炎、ぜんそくなどのアトピー性疾患は、動物のふけなどの抗原に対するⅠ型アレルギー反応によって起こります。過敏性肺臓炎は、鳥の糞などの抗原に対するⅢ型およびⅣ型アレルギー反応がおもなしくみと考えられています。

[診断]
 動物を飼っている家にいて鼻炎、ぜんそく、皮膚炎などが発症し、悪化するようなら、動物アレルギーを疑います。アトピー性疾患では、血液検査でダニやカビに対するIgE抗体を測定することに加えて、飼っている動物のIgE抗体を測定します。過敏性肺臓炎では、血液検査で動物のIgG抗体あるいは沈降抗体(いずれも特殊検査です)を測定します。

[予防][治療]
 アトピー素因のある家庭ではネコ、ハムスターなどを室内で飼育するのを避けるようにします。動物アレルギーとわかったときは、その動物を手放すことが必要です。
 どうしてもネコなどを手放せないときは、毎週必ず動物のからだを洗う、ネズミ類では尿が乾いて飛ばないように処理すると、ある程度の効果があります。ネズミ類に指をかまれただけでアナフィラキシーショックを起こすことがあるので、素手で触れるのは危険を伴います。鼻炎、ぜんそく、結膜炎などに対する薬物治療は、ほかの原因の場合と同じ治療薬となります。飼育動物の成分にからだを慣れさせる減感作療法(アレルゲン免疫療法)は基本的におこなわれておらず、ハチアレルギーの患者さんに対して一部の医療機関でおこなわれているのみです。
 過敏性肺臓炎の治療は原因抗原の除去と薬物療法ですが、呼吸困難が強く、入院による抗原との隔離でも改善しないときは、副腎皮質ステロイド薬による治療や在宅酸素療法(HOT:home oxygen therapy)をおこないます。

(執筆・監修:帝京大学ちば総合医療センター 第三内科〔呼吸器〕 教授 山口 正雄
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