内視鏡検査

 内視鏡検査とは先端に小型カメラを搭載した径5~10mmの細いスコープを口などから挿入し、消化管などを観察できる検査のことをいいます。ここでは、消化器内視鏡検査について解説させていただきます。がん検診などで一般的に知られているのは、食道胃十二指腸を観察できる上部消化管内視鏡検査(胃カメラ検査)と、肛門から挿入する大腸内視鏡検査です。
 共通の原理は、先端部に電荷結合素子・CCD(Charge-Coupled Device)を組み込んだ小型カメラにより、画像をテレビモニターに表示し胃や大腸の内部を観察できることで、「ビデオスコープ(電子スコープ)」と呼びます。胃カメラ検査は1898年にドイツに始まっていますが、広く診断の道具として世界中に普及するのに貢献したのは日本です。
 最近では病変を見分けるため画像を明瞭にしたり、肉眼では見えにくい部分を観察しやすくしたりする工夫がされています。そのおかげで、従来は刺激性のあるヨード液を食道に散布して食道がんを早期発見していたところ、この液を使用せずに発見できるようになりました。現在(2023年7月)、わが国では胃がん検診にも内視鏡検査が採用され、胃がんの死亡率減少効果に貢献しています。
 内視鏡検査は苦しいというイメージがあります。しかし最近では径が5mmに満たない細径内視鏡も開発され、鼻から挿入することができ、十分に診断能力がある機器に進歩しています。現在内視鏡検査による病変の発見は医師個々の能力に依存するところがあります。しかし今後はAI(人工知能)の発展により見逃し率の軽減にも効果があることが報告されています。
 大腸内視鏡の普及もいちじるしく、大腸拡大内視鏡診断は日本から発信された診断技術の一つです。大腸拡大内視鏡は70倍の拡大率で病変を観察することにより、将来がんに移行する大腸腺腫(多くはポリープとして発見されます)を見極め、切除(ポリペクトミー)することができます。
 大腸の検査をおこなうためには、現状では下剤により大腸をきれいにする、というハードルがあります。しかし、この前処置の必要があっても、大腸内視鏡検査を受ける価値があります。
 大腸がんは近年、食生活の変化などもあり、男性、女性とも上昇しているがんです。女性では死亡率の第一位になっています。そのため地域のがん検診では便潜血反応をおこなっています。しかし、陽性になっても精密検査を受ける人は7割に満たないため、依然として大腸がんの死亡率は上昇傾向にあります。
 苦しいイメージがあるからといって、症状が出てから内視鏡検査をしていては、助かるがんも末期での発見となってしまいます。早期で発見するためには検診による内視鏡検査を受けることが重要です。

(執筆・監修:公益財団法人 がん研究会 有明病院 消化器内科部長 藤崎 順子)

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