50歳未満で診断される早期発症大腸がん(early-onset colorectal cancer;EOCRC)の罹患率が世界的に上昇しているなか、診断までの時間が長いことが問題視されている。米・University of CaliforniaのJoshua Demb氏らは、EOCRC患者における徴候や症状、診断までの期間を検討するため、2,490万例超のEOCRC患者を含む81件の研究を用いたシステマチックレビューとメタ解析を実施。その結果、血便、腹痛、貧血を呈する例でEOCRCのリスクが高かったJAMA Netw Open2024; 7: e2413157)に報告した。(関連記事「過去30年で50歳未満のがん患者が大幅に増加」)

早期発症大腸がんは高齢発症と比べ診断までに1.4倍長くかかる

 高齢発症の大腸がんと比べ、EOCRCは徴候・症状出現後の診断の遅れが指摘されている。米国では、EOCRC診断までの期間が高齢発症の大腸がんに比べ最大40%長いとされ(Clin Gastroenterol Hepatol 2017; 15: 728-737)、死亡率上昇の一因となっている可能性がある。

 Demb氏らは今回、EOCRCリスクと関連する徴候・症状、診断までの期間を明らかにする目的でシステマチックレビューおよびメタ解析を実施した。

 2023年5月までにPubMed、MEDLINE、EMBASE、CINAHL、Web of Scienceに収載された文献から、非遺伝性大腸がんと診断された50歳未満の患者における徴候・症状の発現、診断までの期間について報告した研究を検索。対象患者数が15例未満、患者の大部分が18歳未満、1996年(40~49歳の成人においてEOCRC罹患率が上昇し始めた年)以前に発表された研究、研究期間の半分以上が1996年以前の研究は除外した。

 データの抽出と質の評価はPRISMAガイドラインに基づき独立して二重で実施し、バイアスリスクはJoanna Briggs Instituteツールで評価。徴候と症状の頻度はランダム効果モデルを用いてプール解析を行った。

EOCRCリスクは血便で5〜54倍、腹痛で1.3〜6倍、貧血で2〜10倍

 その結果、EOCRC患者2,490万8,126例を含む81件の研究を抽出した。内訳は横断研究が76件、症例対照研究が4件、コホート研究が1件だった。実施地域はアフリカ(5件)、アジアまたは中東(26件)、欧州(19件)、北米(23件)、南米(5件)、オセアニア(2件)だった。

 EOCRC患者に見られた一般的な徴候および症状は、血便(pooled有病率45%、95%CI 40〜50%)、腹痛(同40%、35〜45%)、便秘下痢など便通の変化(同27%、22〜33%)だった。その他、体重減少(同17%、12〜22%)や食欲減退(同15%、6〜34%)も認められた。

 腹痛、貧血便秘下痢、血便、吐き気または嘔吐のうち、血便(相対推定範囲5.2~54.0)、腹痛(同1.3~6.0)、貧血(同2.1~10.8)でEOCRCのリスクが高かった

 徴候・症状の発現からEOCRC診断までの期間は、平均6.4カ月(範囲1.8〜13.7カ月)、中央値4カ月(同2.0〜8.7カ月)だった。

 今回の研究の限界について、Demb氏らは研究間の異質性が高く結果の一部をメタ解析できなかったことや、一貫した比較対照群がなくEOCRCと徴候・症状との関連性の推定は不十分だったことなどを指摘。その上で「血便や腹痛などの症状がある場合はEOCRCを初期鑑別診断に含め、他の診断が確定しない場合や症状が続く場合には、大腸内視鏡検査を含むフォローアップを行う必要がある」と結論している。

(今手麻衣)