医療現場やインフラ設備の点検で、人工知能(AI)を活用するケースが増えている。画像を鮮明にしたり膨大な量のデータから異常の可能性を示したりすることで、問題箇所の見落とし防止や業務の負担軽減が可能。少子高齢化で技術者不足が深刻化する中、サポート役としてのAIの存在感は日に日に高まっている。
 キヤノンは2018年にコンピューター断層撮影装置(CT)でAIを導入。現在はCTの8割程度に搭載する。カメラで培った画像処理技術とAI分析を掛け合わせてはっきりとした画像が撮れるため、「病変が見つけやすく、撮影に使うX線の被ばくも低減できる」(広報)という。脳卒中など一刻を争う際は出血位置に色を付けて示し、素早い判断を支援する。
 富士フイルムは昨年末、内視鏡検査で病変の可能性がある部分を画面上のマークと音で伝え、胃がん食道がんの早期発見を助けるソフトを発売した。これら画像診断を助けるAIソフトを巡っては、政府も24年度から「プログラム医療機器」としての承認期間を最短1年に縮め、普及促進を図る方針だ。
 高度成長期に多くが整備され、老朽化が社会問題となるインフラの点検にもAIが活躍する。リコーは道路やトンネルの点検サービスを提供。車に載せたカメラで撮影した画像をAIが学習データを基に分析し、ひび割れなどを抽出する。
 さらに、人工的に造られたのり面の点検でも宮崎県と実証実験を実施しており、23年度中の本格展開を目指す。数キロに及ぶ広範囲を一度に調べられるため、「高度な技能を持つ技術者は崩落などの危険性が高い地点に集中できるようになる」(リコー事業担当者)という。 (C)時事通信社