【ニューヨーク時事】新たな肥満症治療薬は米欧のメディアで「奇跡の薬」と呼ばれ、運動食事の改善だけではなかなか減量を実現できなかった患者や医師の期待が高まっている。米実業家イーロン・マスク氏ら有名人の利用も注目が集まるきっかけとなった。一方で、吐き気などの副作用があるとされるほか、長期的な身体への影響は未解明のままだ。
 肥満症は従来、自己管理の欠如や意志の弱さが原因だと捉えられがちだったが、近年は遺伝や成育環境にも影響される慢性疾患との認識が広がってきた。「ウゴービ」を製造するノボノルディスクの開発担当者は、「多くの患者は体重を再び増やそうとする生理的反応のために減量に苦労している」と指摘。同薬は「治療の新時代到来を告げるものだ」と意義を強調する。
 ウゴービは2022年以降、有名人の影響で一般的な認知度が高まった。マスク氏は同年秋、X(旧ツイッター)で、断食に加えてウゴービを使っていると明らかにした。また米人気タレントのキム・カーダシアンさんは、本人は否定したものの、利用して減量に成功したとのうわさがささやかれている。
 ただ、新薬の「奇跡」にはリスクも伴う。ノボ社によると、ウゴービの副作用には吐き気や腹痛、下痢便秘、倦怠(けんたい)感などがある。深刻な症状が出るのはまれとされるが、肥満症治療を手掛ける米医師は「長期的なリスクはまだ分かっていない。より多くの患者が継続的に利用することで、知られていなかった副作用が見つかる可能性はある」と注意を呼び掛けている。 (C)時事通信社