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希望を持って前を向く
~「難病」と闘う患者や家族~

 2月28日の「世界希少・難治性疾患の日(RDD)」に合わせ、シンポジウムやセミナー、東京タワーのライトアップなど多彩なイベントが展開された。患者とその家族たちは、生命を脅かす厳しい疾病と闘っている。心を打ったのは「時間がある限り、未来のために使う」という力強い言葉や、ショッキングな病名告知にめげることなく、前向きに生きる患者の姿勢だ。

 患者の数が少ないから希少性疾患と言われる。ただ、世界で約6000疾患あり、約3億人が罹患(りかん)しているという推定がある。これは無視できない数字だ。

ALSと闘う武藤将胤さん

ALSと闘う武藤将胤さん

 ◇視線入力でパフォーマンス

 武藤将胤さんは2014年に筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症した。ALSは手足や喉、舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉が痩せて力がなくなっていく難病だ。シンポで車椅子に乗って登場した武藤さんはパフォーマンスを披露した。

 「手拍子でどんどん参加してください」

 映し出されたパネルに平仮名が並んでいる。視線の動きによって文字を選ぶ「視線入力(アイトラッキング)」によって、言葉が紡がれていく。音楽に合わせて手拍子が盛り上がる。

 「決して1人じゃない。聞こえる仲間たちの声。1人で歩けない景色なら仲間とともに追い続けよう。もっと高く、もっと先へ、自由に舞い上がれ」

 ◇テクノロジーを活用

 武藤さんは視線入力などを駆使し、作曲・作詞した曲を発表している。パフォーマンスでは武藤さんの声が響いた。武藤さんは声帯の筋肉の低下によって声を失っている。テクノロジーの力で声を失う前に自分の声を録音し、残すことができる。

 武藤さんはボーダーレスな社会の創造を目指し、エンターテインメント、テクノロジー、介護という3領域で活動する一般社団法人「WITH ALS」と重度訪問介護事業「WITH YOU」の代表を務めるなど精力的に活躍する。特に、さまざまなテクノロジーを駆使して課題を解決するためアイデアを形にすることに力を注ぐ。

 ◇ネガティブにならない

 「時間があるのならネガティブ(悲観的)にならずに、少しでも未来を明るくするために時間を使いたい」

 武藤さんは実証的な研究に積極的に参加している。ALSでは、最終的に眼球の筋肉を含めたすべての運動機能を失ってしまう。声だけでなく、視力を失う恐れは健康な人には想像しにくい。武藤さんは「今の僕だからできることに毎日、没頭できるようにしている」とあくまでも前向きだ。

 子どもたちの難病の治療の現状を報告した国立成育医療研究センターの笠原群生・病院長は「どんどん先へ進み、社会を広げていこうとする活動が素晴らしい。『人の役に立ちたい。必要な存在と思われたい』ということをモチベーションとしている私たち医療従事者と同じだ」とエールを送った。

 ◇心臓に異物がたまる

 心アミロイドーシスは心臓の筋肉細胞の隙間に異物がたまる疾患だ。心臓が肥大し、硬くなることで心不全不整脈を起こす。主にALとATTRの2種類がある。

 酒井勝利さんは2015年、地下鉄の駅の階段を下りようとした時に息切れと倦怠(けんたい)感に襲われた。かかりつけ医は心不全と診断し、すぐに入院した。

 05年に、指がしびれたり、痛んだりする手根管症候群により両手の手術を受けた。酒井さんは「手根管症候群アミロイドーシスの前兆だった」と振り返る。

 心筋生検の結果、老人性全身性アミロイドーシスと告げられた。最初は知識が乏しく、あまり不安はなかった。ネットで海外の論文などを読みあさるうちに、まだ治療法がなく、予後は平均5年という情報を知り、「自分の置かれている状況はこうなんだ」と分かったと言う。

 酒井さんはそれでも絶望せず、病気と向き合ってきた。「いずれ他の臓器に支障が出る可能性がある。総合病院で治療した方がよい」。かかりつけ医のアドバイスに従って受診。選んだのは専門外来のある慶応大学病院で、主治医を遠藤仁・同大学医学部循環器内科専任講師が務める。

 19年から薬の服用を始めた酒井さんは計測器を購入して夜間の尿の塩分量・濃度を測るとともに、体重や血圧などのデータを記録した。「主治医が知見を深める一助となれば」という思いからだ。

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